2003年11月08日(土) 03時08分
輸血感染、日赤が自力で安全対策…161億円投入も(読売新聞)
B型肝炎ウイルスなどに感染した恐れのある献血血液が病原体検査をすり抜け、輸血に使用されていた問題で、新たな安全対策の実施を迫られた日本赤十字社が、手持ちの余剰資金を試算したところ、161億円あることが、7日わかった。
日赤は、安全対策に当面必要な70億円を自力で負担する方針を固め、最終的には、161億円全額を投入することも不可避との判断に傾いている。一連の問題が表面化する以前は、病原体の安全対策の充実を求める国に対し、日赤側は一方的な費用負担を嫌って、消極的な姿勢を示していた。
日赤の血液事業は1980年代末まで赤字傾向だったが、国は安全対策の充実などを目的として、1990年度に輸血用血液の薬価を大幅に引き上げ、収支が黒字に転換するよう政策誘導した。実際、その後は昨年度まで13年間にわたり、毎年14—83億円の黒字が続いた。その上、血液事業は非課税だ。
このため厚生労働省は、従来、安全対策の改善を求めていたが、日赤は「国による資金負担が前提」との主張を繰り返していた。同省内では「日赤は薬価引き上げの趣旨を理解していない」との批判が出ていた。
今回の試算は、血液事業特別会計の昨年度決算に基づく。預貯金などの形で保有する金融資産は、借入金46億円を差し引いて約754億円あった。うち約593億円は運転資金や通常の設備投資などとして必要だが、残り161億円は具体的な使途が決まっていなかった。
一方、日赤がすり抜け問題に関連して表明した安全対策の中で、2005年度までに必要な主な費用は、すり抜けによる回収に備えて、血液を半年間、日赤内にとどめておく「貯留保管」に20億円、感染症以外にも様々な副作用を防ぐ「白血球除去」に45億円など計70億円程度だった。
ただ、日赤では、2006年度以降、白血球除去にさらに140億円が必要な上、病原体の感染力を奪う「不活化技術」の導入が正式に決まれば、巨額の追加投資は避けられないとみており、今後は、国の財政支援も含めた資金問題が焦点になりそうだ。(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031108-00000001-yom-soci