2003年11月06日(木) 22時20分
<日本育英会>奨学金444億円、回収不能の恐れ(毎日新聞)
文部科学省所管の特殊法人「日本育英会」(東京都新宿区)が支給している奨学金返済の滞納をめぐって、最低444億円が回収不能になる恐れがあることが、会計検査院の調査で分かった。検査院は6日、不良債権の回収率の向上を図り、債務処理計画を立てるよう求めた。
滞納額は95年度200億円だったが、不況の影響などを受け01年度は355億円と増加傾向にある。このため育英会は(1)3〜6カ月滞納(2)6カ月以上(3)自己破産、長期無応答(4)無資力、連帯保証人死亡——などに分類して督促している。滞納者への全貸与金は総額1562億円に上る。
検査院は今回、6カ月以上滞納者を抽出し、回収の見通しを調査した。その返済実績などを元に試算したところ、回収不能率が50.8%、総額で394億円分と算定された。これに、返済が見込めない自己破産などのケースを合計すると、444億円が回収不能となった。
育英会には、不良債権に対する貸し倒れ引当金などは計87億円しかなく、検査院は「来年度、独立行政法人に移行すると債権や不動産などが時価評価されるので、債務超過になる恐れがある」と指摘している。
育英会は2年前、法的措置の対象を、滞納8年以上から1年以上へと厳格化した。だが、実際に裁判所に申し立てて給与などを差し押さえたのは数件にとどまり、連帯保証人への法的措置は取っていないという。指摘を受けた日本育英会は「改善意見を踏まえ、延滞債権の再評価や、連帯保証人への督促強化などの措置を講じ、独立行政法人への移行に適切に対処したい」と話している。【神戸金史】
◇ことば=日本育英会
1943年に財団法人大日本育英会として設立された。経済的に就学困難な学生や生徒に、奨学金を貸与しており、これまで647万人に対し5兆円を貸与してきた。01年度末の貸与金残高は2兆7133億円。特殊法人の統廃合で、来年4月から独立行政法人「日本学生支援機構」に再編され、高校生への奨学金事業は都道府県に移管される。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031107-00000045-mai-soci