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2003年11月04日(火) 08時11分

なぜ何度も辱めを、悲痛な叫び…性犯罪2次被害読売新聞

 性犯罪が増えている。昨年の婦女暴行の認知件数は10年前の1・6倍。事件に遭った女性たちを〈2次被害〉が傷つける。警察官らの不用意な言葉、周囲の目……。保護のための法律ができても、状況は変わらない。「なぜ何度も辱めを受けなければならないのか」。重い口を開いた被害女性の叫びは悲痛だ。(村井正美、福士由佳子)

 首都圏に住む20歳代の女性は、この夏の事件のことを少しずつ話し始めた。「警察を頼れば安心と思っていた。それが……」

 事件の後、警察に通報すると女性捜査員が病院に付き添ってくれ、検査と洗浄を受けた。緊急避妊薬を飲むかどうか聞かれ、「副作用がある」という医師の説明を聞いて断った。

 捜査員は、「また連絡します」と言った。しかし、電話はこなかった。犯人が逮捕されたかどうか知りたくて捜査員に連絡をとっても、満足な説明は聞けなかった。犯人逮捕をあきらめかけたころ、妊娠がわかった。

 中絶の日。担当の捜査員は都合がつかず、初対面の男性捜査員が来た。「自分なら避妊薬を勧めた」。72時間以内に避妊薬を飲めばよかったのにと言われても、どうすることもできなかった。

 「いつか妊娠したら産みたい」と思っていた。しばらく仕事が手につかず、信頼できる友人に話を聞いてもらって何とか落ち着きを取り戻すことができた。

 「せめて自分のような思いをする人を減らしたい」。そう考えてパソコンに向かいチラシを作った。被害に遭った時に警察がしてくれること、してくれないこと。被害者へのアドバイスを盛り込み、「すべてが後手にならないように。あなたが少しでも救われることを望みます」と思いをつづった。

          ◇

 この5年間に50人を超す被害者と接してきたベテラン女性捜査員(45)は、事件を振り返って「無力さを感じることが多かった」と話した。

 学習塾に向かう途中に2人組の男に拉致され、車の中で暴行された女子中学生がいた。

 「警察に届けたら家に押しかける」。2人組の男の脅し文句に、一家は事件後すぐ、遠くの町に引っ越さなければならなかった。

 事情を聞くために転居先を訪ねた日、それまで雑談に応じていた中学生が、引っ越しの話になると黙り込んだ。「家族に迷惑をかけたと思って、つらかったのね」。そう話しかけた途端、中学生は「うん」とうなずいて大粒の涙を流した。

 メンバーの自宅から押収したパソコンに、中学生を含む数人の少女を暴行した際の写真があった。

 被害届が出ている少女を2度3度と訪ねると、親から「もうかかわらないで」と拒絶されてしまった。

 別の事件では、容疑者宅から、暴行した多くの少女の写真が出てきたが、被害届はほとんど出ておらず、余罪を追及できなかった。

 「被害に遭った少女たちの気持ちを考えると心が痛む。被害者が黙ったら犯人の思うつぼ。だから被害女性の事情を聞かなければならないが、その聴取がつらい」。捜査員は話した。

          ◇

 性犯罪事件を数多く手がけてきた角田由紀子弁護士は言う。

 「捜査員や検事の無神経な言葉に傷つき、親告罪で起訴に必要な告訴をあきらめて裁判にならないケースが多い。そもそも警察に被害届さえ出せない女性がいかに多いことか」

 「遅い時間にどうして1人で歩いていたの」「スキがあったと思わないか」

 被害者の電話相談に当たる「東京・強姦(ごうかん)救援センター」は警察官らの不用意な言葉を指摘し、「女性側の『落ち度』の有無を問題とするような考え方を社会全体で改めない限り、2次被害はなくならない」と訴える。

 捜査の現場も配慮はしている。警視庁は1996年から女性警察官を「性犯罪捜査員」に指定し、770人が捜査に当たる。

 しかし、抗議を受けることもある。経験不足から、犯人の悪質さを見極めようと踏み込んだ質問をして傷つけてしまったり、自分の印象をそのまま口にしてしまったりするからだ。

 ビデオカメラを通して意見を述べる「ビデオリンク方式」が広がりをみせる。

 東京地裁530号法廷。先月上旬に開かれた暴行事件の公判で、被害女性が画面の中で涙声で訴えた。

 「事件を早く忘れたい。裁判所に来るのも嫌だったけれど、ビデオで証言できるというので、裁判官に気持ちを聞いてほしかった」

          ◇

 2002年の性犯罪の認知件数は、婦女暴行が10年前の1・6倍の2357件、強制わいせつは2・7倍の9476件。現場には「認知は1割程度」という見方もある。

 ◆ビデオリンク方式=被害者などが、法廷外からビデオモニターを通じて証言や意見陳述をする方式。刑事訴訟法の改正で、2001年6月から導入された。今年8月末までに延べ282人が応じた。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031104-00000501-yom-soci