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輸血による肝炎感染の問題で、日本赤十字社の新たな「不作為」が明らかになった。全国の血液センターの半数以上が、肝炎ウイルスの混入した可能性がある献血血液の追跡調査を試み、一部のセンターは97年ごろから日赤本社へ調査の全国実施を提案していたにもかかわらず、本社は高感度の検査を過信して、見送ってきた。追跡調査は今年まで着手されず、汚染の可能性がある血液を輸血された人は、97年以降で数万人規模に上るとみられるが、感染の確認はほとんどできていない。
日赤本社血液事業部によると、96年から02年までに、傘下の全国75カ所の血液センターのうち40カ所が、試験的に追跡調査を実施していた。調査本数は198本だった。
このうち、過去の献血で検査のすり抜けがわかったのは、B型肝炎ウイルスで48本、C型肝炎ウイルスで5本の計53本あった。この結果は、すべてセンターから本社に報告されていた。
また、日赤中央血液センター(東京)の幹部は「97年ごろから本社血液事業部へ、全国調査を早く導入するよう何度も求めてきた」と話す。
しかし、日赤が全国で追跡調査を始めたのは厚生労働省の指導を受けた今年6月。99年4月から今年9月までの4年半の献血を調べた結果、検査をすり抜けた疑いのある血液を使った輸血用血液は2万6575本あり、大半は投与されていた。調査は途中だが、すでに60件のB型肝炎ウイルス血液がすり抜け、3人の感染が確認された。今後さらに増える見通し。
追跡調査で汚染の可能性のある血液を投与された患者が見つかれば、感染の有無を確認し、早期に治療を開始できる。汚染の可能性がある輸血用血液は年平均6000本前後。97年から追跡調査を始めていれば、検査対象者は3万6000人に上る計算で、これらの人のほとんどが感染の確認をされないままになっている。
日赤血液事業部は「高感度検査を導入すれば、すり抜けは解決できると考え、99年の導入後は、その効果を過信した。国が調査の指針を策定するのを待っていた」と説明。すり抜けが相次いで見つかれば、大勢の血液を集めてつくる血液製剤の供給に影響が出かねないと心配し、消極的になった面もあるという。
日赤血液事業部は「今からみれば、過去の判断はいずれも適切でなかった」としている。
<献血血液の追跡調査> 献血時の血液検査でウイルスなどの感染が疑われた場合、同じ献血者が過去に献血した際の血液も汚染されていなかったか調査すること。遡及(そきゅう)調査ともいう。繰り返し献血する人は多く、献血の直前に肝炎などのウイルスに感染すると、まだウイルスが増殖しておらず、検査をすり抜けてしまう空白期間(ウインドーピリオド)があるためだ。
(10/27 07:52)