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2003年10月27日(月) 15時04分

IT講習用パソコン4600台持ち腐れ読売新聞

 「全国民に情報技術(IT)技能を習得させる」という政府の掛け声で、全国の自治体に配備されたパソコンが有効に活用されていないケースが目立っている。

 会計検査院が調べたところ、箱に入れたまま倉庫に山積みしたり、故障しても放置したりし、職員が仕事用に使っていた自治体もあった。購入費の大半を文部省(当時)が補助したため、多くの自治体が飛びついたが、インターネット接続料やウイルス対策ソフトの更新などに費用がかかるのが“誤算”だったようだ。

 パソコンは、当時の森首相の提唱で2000—2002年度にかけて全国で開かれた「IT講習」に合わせ、全国の自治体が約11万7000台(補助約185億円)を購入、配備した。講習終了後は、社会教育事業のために活用されることになっていた。

 ところが、検査院が約180自治体の約1万5000台について調べたところ、約100自治体の約4600台で、年間の利用時間が12時間を切るなど、ほとんど利用されていなかったり、管理簿にきちんと記載せず、職員が仕事に使ったりしていたことが分かった。

 川崎市は約4720万円の補助を受け、302台を購入した。しかし、講習終了後は箱に入れて倉庫に積んだまま。今月から市内各地の「市民館」で館内使用に限って貸し出しを始めたが、プロバイダーへの接続料や電話代、コンピューターウイルス対策ソフト購入費などの予算が付かなかったため、インターネットへの接続はできない。

 担当者は「今はワープロ代わりにしか使えず、宣伝もあまりしていない」と話す。故障したパソコンも数台あるが、予算がなく修理できないという。

 このほか、検査院が調査に来るというので、慌てて公民館にパソコンを並べたが、利用記録がなかったため、あっさり“偽装工作”がばれた自治体や、箱にも入れず山積みするなど、ずさんな保管でパソコンを故障させてしまった自治体もあった。

 「補助金等適正化法」に基づき、自治体はパソコンを配備後5年間、勝手に処分できないことになっているが、ある自治体担当者は「それまでにパソコンの寿命が来て、がらくたになるだけかも」と漏らした。

 検査院は「多額の補助金で配備した財産を、有効活用しようという認識に欠けている」と指摘している。

 一方で、地域のボランティア団体と協力し、独自に住民向けパソコン講習会を継続させている自治体もある。検査院の指摘を受けた文部科学省は今月、こうした「成功事例」をまとめて全国の自治体にパソコンの有効活用を促した。さらに、パソコンの適切な管理などについても各自治体を指導する方針だ。

 ◆IT講習=インターネットの基礎を学ぶ講座で、全国の学校や公民館などで20歳以上を対象に開催された。しかし、受講者数が定員の半数以下だったり、役所の職員向け研修にしたりしたケースもあり、会計検査院が問題視したこともあった。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031027-00000305-yom-soci