2003年10月21日(火) 15時02分
春秋(日経新聞)
国土交通省の係官がJR東日本の本社に乗り込み、立ち入り検査を始めた。中央線の一連の工事で、配線ミスや重機の置き忘れなど、お粗末なトラブルが相次いだことを重く見た、厳しい措置という。人身事故以外で、鉄道本社の立ち入り検査はきわめて異例。
▼電力、製鉄、石油、タイヤ、鉄道と、日本を代表する大企業の現場で、このところ大きな事故が続発している。システムや機器の老朽化も問題視されているが、日本の生産現場を支えてきた、安全管理の文化が摩耗し、消えかかっているという、怖い指摘もある。現場のゆるみは、経営中枢に責任ありと、国交省は本社に踏み込んだ。
▼現場の事故には鋭く切り込んだ国交省だが、政治家が絡んだ、上層部の疑惑には腰が引けているように見える。道路公団の藤井治芳総裁が石原伸晃大臣に、政治家のイニシャルをまじえて直接語ったとされる、公共事業にからむ不正疑惑。それを役所として調査する気はないと、事務次官も大臣も口をそろえる。
▼「イニシャルが誰を指すのか特定できないので、調査の必要はない」と石原大臣はいう。はて面妖な——。居直った官僚が発した不遜(ふそん)なほのめかしを、調査で解明・特定してこそ改革は進む。役所にその気がないのなら、国会(参院)で問いただすことになる。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031021MS3M2100D21102003.html