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【本格準備】
永田町有力筋は「金融庁は実は、9月初旬からある銀行の検査に入った」と重い口を開く。
通常、この種の銀行には財務省が検査に入るが、今回は本体の金融庁が乗り込んでいる。
「これは実質国有化に向けた準備とみていいだろう」と言うが、金融庁関係者も検査実施については否定しない。
「ご指摘の銀行に検査に入ったのは事実。不良債権化する恐れのある貸出債権への引き当てが適正かどうか、厳格にチェックしている」
【やはり有名地銀】
問題の銀行とは一体、どこなのか。
金融庁関係者はズバリ、実名を挙げて、「関東にある有名地銀だ」と打ち明ける。
夕刊フジが1日に「今秋にも新たに経営不安の銀行に公的資金を注入、実質国有化する方針を固めた」として報じた関東と関西の有名地銀2行のうち、関東の1行である。
「この地銀は特定の取引関係と癒着し、経営上、不明朗な部分が多い。検査や実質国有化で財務状況がガラス張りになると、大問題になる」(金融アナリスト)
そんな欠陥体質を抱えているだけに、取付け騒ぎの危険性と金融パニックが起きる可能性があるため、あえて名前は明らかにしない。
【総裁選対策?】
永田町や銀行界には当初、検査目的で2つの見方があった。1つは、9月20日に投票が行われた「自民党総裁選対策説」であった。ベテラン与党議員は解説する。
「この有名地銀は反小泉勢力の“爆弾”になるのではないか、とみる向きもあった。検査が自民党総裁選の時期と重なったこともあり、反小泉勢力対策という見方が浮上したが、その後の動きをみると、総裁選対策ではなかったようだ」
【本命は国有化準備説】
代わって確実視されるようになったのが「国有化準備説」。大手銀幹部が明かす。
「金融庁が有名地銀に検査に入ったとの情報が流れてからしばらくすると、国有化後の受け皿として、メガバンクの名前が取りざたされるようになった。このメガバンクは受け皿になる気は毛頭ないようだが…」
【なぜ、受け皿が】
この「受け皿探し」の持つ意味は大きい。
「単に公的資金注入で実質国有化するなら、りそなのように、受け皿銀行はいらない。受け皿が必要なのは破綻処理をするケースだけ」(前出の大手銀幹部)
つまり、「有名地銀には、引き当て不足がかなり存在する。きちんと引当金を積むと、債務超過に陥る可能性がある。その場合は破綻処理したうえで実質国有化し、業務を受け皿銀行に引き継ぐことになる」
【金融危機回避】
永田町からも実質国有化に絡み、具体的で衝撃的な話が漏れ始める。
「りそなの場合は破綻前の銀行として、預金保険法102条の1号措置がとられた。だが、有名地銀については、検査の結果次第で、3号措置がとられる可能性もある」(永田町有力筋)
3号措置? 預金保険法102条は、金融危機を未然に食い止める対応を定めたものである。
1号措置は破綻前の銀行に行われ、公的資金を事前に資本注入して、早期の再生を目指す。
3号措置は、債務超過に陥るなど、すでに破綻した銀行に行われるもので、預金を全額保護した上で国有化する。
前出の金融アナリストは「りそなのケースと違い、株券は旧長銀や旧日債銀のように紙くずになる」と解説する。
【破綻処理の受け皿】
肝心の「受け皿探し」だが、スンナリとは行きそうもない。別の大手銀幹部は解説する。
「大手金融グループのうち、国有化銀行の受け皿になるだけの余裕のあるところは、三菱東京フィナンシャル・グループを除けば皆無。大手金融グループは平成15年3月期決算で軒並み赤字となり、8月に金融庁から収益改善のための業務改善命令を受けた」
「メガバンクは株高に加え、銀行税訴訟の和解で都から納めた税金も返還され、9月の中間期決算を前に収益を上方修正した。だが、円高で景気が再び悪化する可能性もある。来年3月の期末決算では、ヘタをすれば自分の銀行の経営陣のクビが飛び、国有化の憂き目に遭いかねないのに、有名地銀のことなど構っていられない」
【Xデー】
有名地銀の破綻処理という最悪の事態も視野に入れた「りそなの次」が現実味を帯びるが、その時期については制約もある。
早ければ9月の中間決算で国有化に持ち込まれる可能性もあるが、小泉純一郎首相が11月9日投票の総選挙前に、金融パニックを起こしかねない銀行国有化を強行するかどうかは微妙である。
さらに、破綻処理の場合、受け皿となる金融機関が必要になるが、その選定が難航を極めるのは必至で、時間を要する可能性もある。
回復基調にあるかにみえる日本経済だが、水面下にはまだまだ火ダネがくすぶっている。
ZAKZAK 2003/10/21