2003年10月12日(日) 10時07分
「新型BSE」伊でも2頭、感染源へ手がかり(読売新聞)
茨城県で確認された国内8頭目のBSE(牛海綿状脳症=狂牛病)感染牛と、病原体の異常プリオンの構造が同じと見られる感染牛が、昨年、イタリアで2頭見つかっていたことが11日わかった。
イタリアの研究者がドイツで開かれた国際プリオン病会議で発表した。茨城県の感染牛のプリオン構造は、世界中の感染牛に同じタイプがなく、「国内に未知の感染源があるのでは」との懸念も出ていた。有力な手がかりを得たことで、日本の専門家は「イタリアと共同研究を進め、感染源を絞り込みたい」としている。
この会議に出席した小野寺節・東大教授によると、イタリアの2頭は11—12歳。プリオン構造を調べるBSE検査の結果や、プリオンが蓄積する脳内の場所などが、2頭とも従来型と明らかに異なっていた。イタリアの研究者も「イタリアにこれまで知られていないBSEが存在している可能性がある」と報告した。
小野寺教授とイタリアの研究チームが、さらに詳しくデータを検討し合った結果、「同じタイプのBSE(非定型)である可能性が極めて高い」との見方で一致した。小野寺教授は農水省BSE技術検討会などに報告した上で、感染力や病原性の強さについてイタリアと共同研究し、感染ルートの特定を進める考えだ。
農水省は先月、国内のBSEの感染源の1つとして、1990年以前にイタリアから輸入された肉骨粉飼料の可能性を発表しているが、8頭目のケースもイタリア産肉骨粉から広がった可能性が出てきた。
BSEは、感染牛の内臓や骨を原料にした肉骨粉を牛の飼料として再利用したことで各国に広がったとされる。これまで18万頭以上が感染しているのに、異常プリオンは1種類しか報告されていなかった。
◆BSE検査=食肉処理時の1次検査(エライザ法)は異常プリオンの有無を調べるが、感度が高く、感染していなくても陽性と判定する場合がある。そこで、高精度の確認検査(ウエスタンブロット法)で病原体に含まれるたんぱく質の重さを測って構造的な特徴を分析し、最終的に異常プリオンか判定する。
◆プリオン=牛のBSE(牛海綿状脳症=狂牛病)、羊のスクレイピー、人のクロイツフェルト・ヤコブ病など「プリオン病」と総称される致死性の中枢神経障害を引き起こす病原体。
異常プリオンは、動物や病気の種類によって感染力や臨床症状などに大きな差があり、ヤコブ病も原因不明の孤発性、医療行為でうつる医原性、BSEが感染した変異型などがある。
プリオンは英語の「感染性たんぱく質粒子」の略語で、米国のスタンリー・プルシナー博士が1980年代前半に発表。この研究で博士は97年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。ウイルスや細菌と異なり、生命の設計図である遺伝子を持たないたんぱく質が、自己増殖するという考え方は当時、生命科学の常識に挑戦するものとして、大きな議論を巻き起こした。(俊)(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031012-00000001-yom-soci