2003年10月07日(火) 13時37分
社説2 薬のテレビ電話販売認めよ(日経新聞)
情報技術の進歩で様々なことが可能になる中で、古い法律や制度がその普及を阻む例がしばしばある。
大手ディスカウントストアのドン・キホーテは8月、テレビ電話を使い薬剤師がほかの店舗を訪れた客にも薬を売り始めたが「店舗ごとに薬剤師の常駐を義務づけた薬事法に違反する恐れがある」という厚生労働省の指摘を受け9月から深夜に限りしかも無料提供にした。それでも同省は違法の疑念を捨てていない。
こうした販売方法で大きな問題が生じるとは思えないが、もしテレビ電話での販売だと心配な薬があればそれを除外するなど多少の制限を設けてでも、販売を認めるべきだ。
この会社は今、夜10時から翌朝6時まで東京・六本木の店に薬剤師を常駐させ、東京の12店舗を薬剤師の帰宅後に訪れる客の相談にテレビ電話で応じて薬を選び、各店舗の店員が提供している。処方せんが不要な一般の薬に限っており、鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬の需要が多い。
厚労省は、テレビ電話方式の欠陥として▽泥酔した客はのむ薬の量を間違える恐れもあるので厳格に対応する必要があるが、テレビ電話では酒臭さが伝わらない▽前の晩に訪れた客が再び同じ薬を希望し、同時に薬の副作用とみられる肌の荒れなどを訴えたとき、画面では副作用かどうか分からない▽薬剤師が常駐していないと薬の有効期限や品質の管理ができない——などをあげる。
これらは克服できる。酔った客は店舗にいる一般店員には分かるから薬剤師に告げればよい。副作用かどうか分からなければ再び売らない規則を設ければ対応できる。薬の管理は昼間に薬剤師がいれば十分だ。
コンビニエンスストアなどで客が深夜に売ってほしいものの1番は薬だといわれる。一般薬の中でも一定の薬学知識を必要とする「指定医薬品」を除くなど、初めは制限を設けるとしても、客の要望に応えるのが筋だ。無料提供では長続きしまい。
ドン社は8月には昼間も、薬剤師が所用で不在の店を訪れた客にテレビ電話で六本木から対応していた。一方、厚労省の調査だと一般薬店の2割強は薬剤師が調査時に不在だ。テレビ電話は薬剤師常駐制の形がい化を改善する手段にもなるはずだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031007MS3M0700K07102003.html