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新米を狙った盗難事件がとまらない。収穫作業を終えるのを見計らって黙って持ち去るコメ泥棒は、不作の年に多く出没する。でも、盗まれたコメの行方は? 流通業者や小売業者は「大半はヤミ市場で売買されている」といい、実態はなかなかつかめない。「安売り店に持ち込む」「ブレンド米に混ぜる」「インターネットのオークションに出しているのでは」と推測する声もある。
「取りたてのコメがあるんだけど使わない?」
9月下旬、東京都内のコメ小売店の前にとまった軽トラックから、50代の男が親しげに声をかけた。「どんなコメなの」と店主(46)が聞くと、男は「物を見て決めてよ」。トラックには30キロ入りが20袋ほど積んであった。コメを見ると、確かに新米のツヤ。ただ袋は03年産ではなく、02年産用の古いものだった。
店主は「盗品だな」ととっさに感じ、「素性が分からないコメは扱えないな」と断った。「そう」と一言残し、男はすぐさま立ち去った。
千葉県飯岡町では8月下旬、スーパーを経営する暴力団幹部(49)が逮捕された。仲間5人と昨年6月、コシヒカリ5トンを盗んだ疑いだった。
幹部は30キロ袋のコメを小さい袋に詰め替えて売り物として店に陳列。ただ、正規に仕入れたコシヒカリより値段は安くしていた。コメ泥棒の余罪は11件あるとみられる。
だが、コメの行方が明らかになるケースは少ない。収穫後、農家の倉庫から盗まれるコメは、まだ出荷検査を受けていない。未検査の「計画外流通米」として扱われ、「自由に様々な取引ができるため、追跡は難しい」(農水省)という。
盗難が相次ぐ千葉県内のコメ小売店主(49)は「ブローカーが仲介し、ヤミ市場に流れているだろう」と話す。相場を大幅に下回るコメが売られている例があり、「原価割れのコメなんて不可思議だ。破格の安値は盗品の可能性が高い」。
大手コメ卸の担当者は「善意の第三者を経由すれば盗まれたコメでも問題なく流通してしまう。そうなったらだれもわからない」。ただ最近、コシヒカリと安い他銘柄が入った倉庫で、出入り口近くに置いてあった安い銘柄だけ盗まれたケースがあった。「盗みはプロだがコメは素人。昔からのコメ泥棒に加え、新たな便乗者もいるのでは」と話す。
○防止策効かず、ぼやく農家
相次ぐコメ泥棒に、収穫期を迎える産地では防止策も試みている。「重機でATM(現金自動出入機)から金を盗む時代。コメ倉庫に入るなんてわけねえ」と、ぼやきも出ている。
9月21日の朝、ネズミよけにコメ倉庫に放していたネコが母屋にいた。「どうしてだろう」。千葉県大網白里町の加藤保夫さん(55)が急いで倉庫に行った。窓ガラスが割られ、コシヒカリ1.9トンが消えていた。
前夜は雨。刈り取りから働きづめで、家族全員が早めに床についた。泥棒はシャッターの外側にトラックを乗りつけ、持ち去ったと見られる。
「狙われたとしか思えない」と加藤さん。妻の芳枝さん(52)も「犯人に農作業の苦労を味わわせてやりたい」。
コメ泥棒は、8月末までに全国で50件(警察庁調べ)。9月以降も福島、茨城、広島、山口、兵庫などで約20件が相次ぎ、新米の季節を迎えて増えるばかりだ。
人気の魚沼産コシヒカリの収穫が最盛期を迎えた新潟県南魚沼地方。同県六日町の農家は3年前、玄米30キロを盗まれた。その後、倉庫や納屋にセンサーでライトがつく装置を取り付けたが、「気休めにしかならないよ」。
塩沢町の舘野喜一さん(73)もコメ泥棒を防ぐ根本的な対策がないと嘆く。「警察がパトロール強化しても効果があったのか。全国見てみぃ、コメ泥棒が少しでも減ったのか?」
(10/05 11:09)