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2003年10月03日(金) 00時00分

ギャンブル都政の石原知事 打った政策 スカばかり 東京新聞

・ディーゼル車排ガス規制 <〇> 今月から物議醸し発進

・ホテル税 <△> 申告税額は76%止まり 

・銀行 <×> 裁判敗訴し和解白旗 

・カジノ構想 <×> 法律の壁で構想倒れ 

・後楽園競輪 <?> 地元猛反発し裏目に 

・新銀行 <?> 運営能力に疑問の声も 

・ロード プライシング <?> 実現へ走りだせず 

 石原都知事が進めるディーゼル車排ガス規制が今月から始まり、大気汚染対策はどうにか走りだした。だが再開を表明している東京ドームでの競輪開催問題は、実現には黄色信号が点灯している。こればかりではない。実は都知事が打ち出す政策の大半は、無残な末路をたどっている。「一か八かの“ギャンブル都政”」との声も聞こえてきそうだ。

■ドーム競輪再開に怒る地元

 「三十年前、女性や子供は(競輪が開かれていた)スタジアムを避けて遠回りをしていた。ケンカはしょっちゅうだし、治安が悪かったからだ。とにかく競輪はとっくに廃止されたものと思っていた」

 文京区町会連合会の菅沼利雄会長(79)が力を込める。地元では先月末、東京ドームでの再開が検討されている後楽園競輪に反対する「後楽園競輪再開反対文京区民連合」が設立された。菅沼会長はその発起人代表を務める。

 石原知事が財政再建策として東京ドームでの競輪再開を表明したのは、六月の都議会だ。煙山力文京区長は区議会とともに七月に「反対」の要請文を都に出した。「だが知事はなかなか発言を撤回してくれない。これはたいへんだ、と思って…」と菅沼会長は同連合を設立した危機感を話す。

 競輪再開への地元の反発は大きい。後楽園スタヂアム(現・東京ドーム)で、都が開催していた後楽園競輪は「都営ギャンブルの全廃」を唱える美濃部知事により、一九七三年に廃止された。八八年に開設した東京ドームには、なぜか地下に自転車競技用の折り畳み式バンクが設置された。

■廃止時の協定書解釈に食い違い

 鈴木都政や青島都政時代にも再開の話は出ては、消えている。その理由は、廃止時の都と同スタヂアムが交わした協定書の解釈が食い違っているからだ。

 煙山区長は「そもそも都の決定は『休止』ではなく『廃止』だった」と繰り返す。協定書は「施工者のいかんを問わず、後楽園競輪場を自転車競技事業の用に供してはならないものとする」と明言している。「協定書は引き続き生きている」と同区長は強調する。

 これに対しこれら新政策を担当する知事本部では「協定は失効している。新規に開催できる」との見解を示す。競輪事業を廃止するかわりに、都が同スタヂアムに無償で貸し付けた九十七億円が全額返済されていることがその理由だ。協定は「廃止」を約束したものではなく「貸付」の契約書であるというのだ。

 煙山区長は「区内には十六の大学があり、七万人の学生が通う。区が最優先しなければならないのは、教育に配慮した環境だ。ギャンブルを持ち込むことは容認できない」と憤る。

 前出の菅沼会長も「石原知事は、昔とは違うと健全さをアピールするが、ギャンブルはそもそも負ける方が多い。むしゃくしゃするし、エキサイトもする。治安回復を掲げて、警察官僚を副知事にした都の施策にも逆行する」と憤慨する。

 地元の反発を受けてか、都は「(再開に向けた)タイムスケジュールなども決まっていない」と歯切れが悪い。石原知事も「地元区民の理解を得ることが重要」と繰り返すだけだ。

■公営ギャンブルのドル箱時代終息

 公営ギャンブルがドル箱だった時代は終わっている。一昨年度には、九州や関西で三つの競輪場が運営難から閉鎖された。地方では“お荷物”と化している競輪場も少なくない。

 都は「赤字になるとは考えていない」(知事本部)とするが、収益予想の具体的数字を挙げてはいない。

 東京に近く比較的集客力のある川崎競輪を開催する川崎市公営事業部担当者は「九一年ごろには、一般会計に年間五十億円くらい入れた黒字もあるが、最近ではもうけは気持ち程度。やっと一億円を入れている」と嘆息する。

 同担当者は「後楽園競輪は日本一、売り上げが多かった。立地条件がよいので、そうそう赤字になることはないと思うが」と言いながらも、「ファンの高齢化は進む一方。これから、新たに競輪事業を始めるとすると、設備や職員の配置などでかなりの初期投資が必要になる。本当に収益を生むか、慎重なご判断をされた方がいいと思う」と懐疑的だ。

 石原都政が打ち出した政策は難航するものが多い。都議会の手放しの賛成を受けた「外形標準課税(銀行税)」は銀行側から無効を訴えられ、一、二審で敗訴。都側が和解を申し入れ、事実上の“白旗”を上げた。東京湾臨海部のお台場の活性化策として打ち出した「カジノ構想」も「現行法の枠内では無理」と当面は断念を表明した。

 「ホテル税」は昨年十月に導入したものの、今年六月までの申告税額は約八億五千万円で、当初見込みの76%にとどまっている。新銀行設立は、貸出先の審査能力に疑問が指摘され、都心に流入する自動車に課金する「ロードプライシング制度」も実現のめどはたっていない。成果としてディーゼル車排ガス規制導入が目立つが、トラック業界からは「弱い者いじめ」との声も上がっている。

 青島都政時の諮問機関委員を務めた五十嵐敬喜法政大学教授は、石原知事の手腕について「ディーゼル車規制や、屋上緑化では評価する点もある」とする一方「お台場の開発では、カジノ構想など実現不可能なものを打ち出すばかりで、臨海部開発で膨大な借金をしていることを十分説明していない。都市計画についても無秩序にデベロッパーのいいようにやらせて東京をだめにしている。行政能力はゼロ」と酷評する。

 返す刀で「青島知事は都市博を中止させた点は評価できる。青島さんの方がまだ、こんな荒唐無けいな政策を出すことはなかった」と石原知事にあきれる。

 「てっぺん野郎 本人も知らなかった石原慎太郎」の著書がある作家の佐野真一氏も「両知事の手腕比較には詳細なデータがない」と断った上で「青島さんの最大の功績は、大型施設を造る“箱物”行政を推進し東京の空洞化を招いた鈴木都政を、都市博をストップさせることで方向転換させたこと」と評価する。

■「オリジナルな政策何もない」

 逆に「石原氏が打ち出している政策は、目新しいようでいて、実は彼自身によるオリジナルなものは何もない」と分析する。

 佐野氏は、最近の石原氏について「外務省の田中審議官へのテロ容認発言といい、曽我ひとみさんの母親の消息についての無責任発言といい、あまりにも下劣な彼のメンタリティーが露出した」と批判した上で、こう話す。

 「総裁選で再選し盤石になった小泉政権を見て、自分の国政復帰への可能性が低くなったと考え、(開き直りで)地を出してしまっているのではないか。都知事選で、彼を支持した人々は今、知事に彼を選んだこと自体、深く悔やんでいるのではないか」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031003/mng_____tokuho__000.shtml