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「日の丸ソフト、トロンもついに米国の巨大企業の軍門に下った」「恩しゅうを乗り越えた提携」…。さまざまな感想が飛び交った。
日米貿易摩擦が激しかった一九八〇年代半ばに開発されたトロンは、米国の横やりで日本政府が支援の手を引いたため表舞台から去った。
それを境に、マイクロソフト社のウィンドウズが日本市場を席巻。トロン支持派にとって、ウィンドウズは苦々しい存在だった。
コンピューターの今後の利用分野として最も成長が期待されているのが、ネット家電と呼ばれる分野だ。あらゆる家電製品がネットワークで結ばれ、通信回線によって外出先からでもコントロールできる。
トロンは表舞台から去った後も、携帯電話や自動車のエンジン制御など人目に触れない場所で着々と足場を固め、この分野では世界の最大手になっている。
ネット家電の成長で、再びトロンの活躍の場が訪れるのではと、期待が高まっていた。
だが、ネット家電分野は市場が膨大なだけに今後の開発には資金力が必要だ。企業や研究者のボランティア中心に推進されてきたトロンにはマイクロソフトのような巨大企業の後押しが欠けている。
マイクロソフト社との提携は、トロンの生みの親、坂村健東大教授の苦渋の決断だったに違いない。
トロンは、ソフトの小型化と命令の即時処理という、ウィンドウズが最も不得意とする点を強みとして持っている。マイクロソフト社としては、のどから手が出るほどほしかった技術だろう。
逆にウィンドウズが得意とする画像処理などマルチメディア性はトロンの不得意分野だ。現実に、エンジン制御はトロンで、運転席のカーナビゲーションはウィンドウズという国産車も現れ始めている。
これからは、小型化とマルチメディア性の両方を兼ね備えたソフトが求められている。両者の提携は時代の要請だった。もはや、日本製だ、米国製だ、と角突き合わせる時代ではない。
当面、マイクロソフト社はトロンのボランティア主義を尊重し、低姿勢での参加だ。
互いの長所を生かし、世界中から歓迎されるソフトが生まれることを期待したい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030930/col_____sha_____003.shtml