2003年09月30日(火) 15時08分
春秋(日経新聞)
お江戸日本橋七つ立ち……午前4時ごろ日本橋を出発すれば高輪あたりで夜が明けた。江戸の入り口、高輪大木戸(おおきど)を出ると東海道五十三次(つぎ)の一つ目、品川宿は目と鼻の先だ。日本橋から徒歩2時間余り。宿場としては近すぎる気もする。
▼あの弥次喜多(やじきた)も旅立ち初日は五つ目の宿場の戸塚に投宿した。では、近すぎる品川が閑古鳥だったかといえば、さにあらず。近さが利点だった。旅立つ人と、見送りの衆が送別の宴を張ったり、江戸に入る大名や武士が供揃(ともぞろ)えを整えたり。北の吉原に南の……といわれた遊里もあって、歓楽街としても大いに栄えた。
▼旧宿場は、京浜急行の北品川から青物横丁にかけてのあたりだが、旧街道筋が商店街になっていて、本陣跡など旧跡の表示もあり歴史散歩も楽しめる。東海道新幹線駅が今日開業するJR品川駅は宿場跡からは少し離れる。周辺は、江戸時代は海だった埋め立て地に高層ビルが林立し、ビジネスセンターに大変身だ。
▼弥次喜多の道中記には宿場での客引きの様子が活写されているが、羽田空港に近い品川開業で、新幹線と航空機の客引き競争が過熱しそうな気配だ。全体にスピードアップし、最速の「のぞみ」を増発する新幹線の攻勢に、航空勢がどう立ち向かうか。便利になるのは利用者として大歓迎だが安全第一をくれぐれも。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20030930MS3M3000S30102003.html