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「涙が止まらなくて…」「読んでて切なくなった」−。インターネット書店の読者レビューには、女子高生らしき投稿者のコメントが並ぶ。
《あっ…もう一時間は舐め続けている。
ハゲあがった頭を小刻みに揺らして、クチュクチュ音を立てながら、オヤジが嬉しそうに言った。「オイしいね。アユちゃんのは」》
物語は、17歳の冷めた女子高生アユがオヤジにウリをするシーンで始まる。家に帰らず、ヤリ友の部屋に泊まるアユ。
過激な性描写。「トップには(出版を)反対されました。最初のページを読んでパタンと本を閉じる感じ」と苦笑するのは、スターツ出版の担当者だ。
Yoshi氏 雑誌などが中心だった同社が書籍への進出を計画。「自費出版で10万部を売ったすごいヤツがいる」と聞きつけた。有名作家も含め、初版本の平均は5000部。にわかに信じがたい数字だが、それが『Deep Love』だった。
30代半ばのYoshi氏は3年半前、携帯サイトを開設。サイトに届く女子高生らからのメールを題材に小説を書き、載せ始めた。「本にして」とのメールが寄せられ、自費出版。1冊1500円で宅配便で送っていたという。
社内の反対を押しきり、昨年末に第1部『アユの物語』を出すと、郊外型書店を中心に予想を超える売れ行きに…。3部、特別版を出版した今夏には、高校生の母親も手に取るようになった。最近は中・高校の図書館からの注文も増えている。
荒れた生活をしていたアユは、犬やおばあちゃん、心臓病の少年に出会い、心を取り戻す。だが、エイズに体をむしばまれていた…。
ある意味オーソドックスな展開。細かい性描写が折り込まれる一方、おばあちゃんが戦争体験や特攻隊の亡き夫との純愛を語る。「牢屋のような電車」「常識という鎧」。ちりばめられる言葉は、故尾崎豊さんを彷彿とさせる。
従来のベストセラーの概念にはないことは確か。「本を読まない世代に支持されている」と、担当者は分析する。
「小説を書きたいと思ったことはない。構想は10分くらい。『日本昔話』とか『フランダースの犬』を書いているつもり。結構アンチョコなの」と笑うYoshi氏は学校を卒業後、10年ほどサラリーマンをした。
「自分が違うと思ってもやらなきゃいけない」と、サラリーマン生活に辟易し、退社。サイトを立ち上げ、東京・渋谷のセンター街でアドレスを書いたチラシを配ることから始めた。
ミリオンセラーを目前に、本は映画化が決定。秋からはラジオ番組を持ち、テレビの出演依頼も多い。
「(考えを)伝えることで、自分が生きていると感じる。自分が生きていることが、人の人生を変える」
「何で女子高生の気持ちが分かるの」「援交を止めます」。読者から、そんなメールが届く。仕事で悩むサラリーマンからのメールもある。
「大人も子供も変わらない。基本は今も昔も同じ。愛、恋、やさしさ。本質は同じだから、この本を書けた」
物語は結局、アユをはじめ多くの登場人物が死んでゆく。Yoshi氏は彼らを「時代」の犠牲者として描く。
ならば、この物語は「時代の寵児」か。
ZAKZAK 2003/09/29