2003年09月28日(日) 03時07分
<コメ>無名ブランド急騰(毎日新聞)
10年ぶりのコメ不作で品薄が予想される高級ブランド米の代わりに、これまで無名だった一部のブランド米が注目されている。特に自主流通米の入札で高値をつけた県の関係者は「知名度が上がった」と大喜びだ。だが一方で米不足に泣かされそうな産地も多い。コメ生産・流通への市場原理導入を目指す改正食糧法の来年度スタートを前に、産地間の生き残り競争は激しさを増している。
8月26日にあった今年産の自主流通米入札で、千葉県産「ふさおとめ」は前年比3割高の1万9701円(60キロ当たり)で落札された。今月12日の第3回入札では、主力の「コシヒカリ」が2万4877円と5割高に。「(前年比)2割を超せば異常高値」(流通関係者)と言われ、そのラインをあっさり突破した。冷夏で人気銘柄の出荷が遅れる中で早めに上場でき、注目銘柄になった。
全農千葉県本部は数年前から「ふさおとめ」の新米キャンペーンを続けてきたが、県外での知名度は極めて低かった。ところが、今年の入札後は東日本一円や北海道の卸売業者から問い合わせが殺到した。県本部米穀部は「価格が実力相応か否かは別にして、知名度は上がり競争力も高まった」と素直に喜ぶ。
徳島産「コシヒカリ」は8月8日の第1回入札で2割高に。全農徳島には東京をはじめ全国から問い合わせがあった。「徳島コシの存在を知っている人が今まで東京にいたでしょうか」(農産資材部)と胸を張る。
一方、九州で知名度が高い「ヒノヒカリ」は地元のコメ不足で全国進出の機会を逃しそうだ。「今年は東京で販売される」と予想した流通関係者も多かったが、全農大分は「つき合いがある業者の分を確保するだけで精いっぱい」(米麦課)。
人気銘柄の「ひとめぼれ」「あきたこまち」が主力の岩手県は、26日発表の作況指数(9月15日現在)が77。最近では全国的な大凶作だった93年同時期の42(最終的には30)に次ぐ悪い数字だった。全農いわては「産地間のシェア奪い合いへの危機感は強い。でも今は競争の見込みすら立たない」(米穀部)とつらそうだ。
自主流通米の卸売業者団体、全国米穀販売事業共同組合は「人気銘柄が品薄になれば、代替銘柄を探すのは当然」(業務部)と言う。無名の産地・銘柄にとって、今年は名前を売る好機となりそうだ。【望月靖祥】
◇ことば 改正食糧法
昨年12月策定された政府の米政策改革大綱を受け、今年6月に改正案が成立した。最大の柱は生産調整配分(減反)の08年度までの廃止。これまで国が減反面積を決めてきたが、廃止後は農協など農業者の自主調整となる。来年度からは、転作奨励金など全国一律だった助成金の仕組みを変え、各地域が独自に助成基準を決める「産地づくり推進交付金」制度も始まる。(毎日新聞)
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