2003年09月27日(土) 00時00分
揺れる下関ふぐ (下)/信頼へ仲卸が決断フグ料理を楽しむ男性客。下関フグは重要な観光資源でもある=下関市豊前田町2丁目で(朝日新聞・)
「安全なら市場法上、ホルマリン使用フグでも扱う義務がある」。下関唐戸魚市場の松村久社長はこう繰り返し、長崎県のホルマリン残留検査での安全性確認を条件に受け入れ方針を打ち出していた。
安値での取引が予想されることで、大阪などの業者が早くから使用フグを狙っているとの情報も判断に影響した。「流通は必至。ならば、使用と未使用の区別を明確にすることが下関の信頼につながる」。消費地と産地の直取引が増える中、産地の窮地を救うことで存在感を示そうとの思いものぞいた。使用フグが全国に出回ることを踏まえた「現実策」だった。
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広がる波紋 競り落とす側の仲卸業者の足並みは乱れた。
下関唐戸魚市場仲卸協同組合(中尾隆之理事長、28社)は8月18日、9割の賛成で拒否の方向を決めたが、一本化は先送りに。「安全で良質なら欲しい」という取引先を抱える組合員もいたからだ。1カ月後、全国主要都市の仲卸42組合で作る「全国水産物卸組合連合会」(東京)が受け入れの統一見解をまとめたことで、取引のある全国の仲卸業者から注文が来るのは決定的になった。
それでも「下関ブランドを守る」として今月22日、加工を含む一切の扱い拒否を決めた。市場で使用フグの競りに参加する仲卸はいなくなり、下関唐戸魚市場も26日、入荷断念を明らかにした。
「漁業者への打撃は大きい」と長崎県水産部。フグ加工の7割を下関の仲卸に依存する東京・築地魚市場のふぐ卸売協同組合(78社)も「関西は自分たちで加工できるが、我々は別。大変だ」と戸惑う。福岡の仲卸組合も拒否を決め、動きが広がる可能性もでてきた。
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区別は未知数 長崎の使用フグの出荷準備は整いつつある。出荷時は残留検査で安全を確認し、ホルマリン使用を示す履歴をつけ、区別のためにヒレを切る。加工物には専用シールをつける。全国水産物卸組合連合会でも、近く区別対策をまとめる。
だが、消費者が口にする段階まで区別が徹底されるかは未知数だ。長崎県の金子原二郎知事は「出荷後の追跡調査をやりたいが、実質的には難しい」とし、同連合会も「自分たちが扱う段階までしか責任が持てない」と言う。流通過程で扱う業者が増えるほど、区別はあいまいになる。
「『ホルマリンを使ったフグですよ』と出されたら、自分でも食べたくなくなる」。ある市場関係者はこぼす。
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24日、天然フグの初競りが南風泊市場であった。使用フグ拒否による入荷減で相場の高騰も懸念される。下関の対応に消費者や産地が今後どう反応するのか。先行きが見えないまま、今シーズンが始まった。
(この連載は外尾誠が担当しました)
(9/27)
http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news01.asp?kiji=3273
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