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2003年09月25日(木) 00時00分

揺れる下関ふく (上)/安全主張する産地下関市のホルマリン残留検査。入荷した養殖フグを抜き取り、身の成分を調べて安全性を確認する=下関保健所で朝日新聞・

  「絶対安全なのでフグは廃棄しません。安心して食べて欲しい」。7月10日、下関市内のホテル。養殖トラフグのホルマリン使用問題を考えるシンポジウムで、この薬を使った長崎県の生産者代表が訴えた。

  ●根強い依存

  ホルマリンはフグの寄生虫駆除に使われた。血を吸われて成長が妨げられたり、体が傷つけられて死んだりするのを防ぐ。いけすの内外にビニールシートで囲った浴槽を作り、海水100トンに60〜80リットルの濃度でホルマリンを注いで、魚を30分ほど浸す。「薬浴」と呼ばれる手法で生産量の安定に有効だったが、安全性が疑われて81年に水産庁が禁止を通達した。

  その後、代替薬が開発されたが、(1)水温が高い時に使うと魚が弱って生存率が下がる(2)価格が割高、という弱点に加え、ホルマリンだと魚の食欲が落ちないとの説もあり、ホルマリン使用が根強く残った。

  ●劇物に指定

  ホルマリンはホルムアルデヒドを約37%含む水溶液。消毒剤や防腐剤などに使われ、毒劇物取締法で劇物に指定される。皮膚炎や頭痛、呼吸困難を起こし、シックハウス症候群の原因物質とされる。発がん性も疑われている。

  熊本県では96年、真珠貝大量死との関連が疑われ、翌年、真珠養殖業者がトラフグ生産者を提訴。薬浴にホルマリンを使わないことで和解し、漁業調整委員会で規制措置が取られた。だが、再三出された水産庁の通達は「使用を極力避ける」などのあいまいな表現で、徹底しなかった。薬事法改正で3年以下の懲役などの罰則がつき、厳しい法の網がかかったのは今年7月末だった。

  ●残留なしで出荷

  今年4月、長崎県で生産者の6割がホルマリンを使った事実が公になり、熊本県や香川県でも使用が明るみに出た。

  生産量日本一の長崎県では、養殖中の半数近い166万匹が出荷停止となり、県が廃棄を要請した。だが三十数億円分にものぼるため、生産者は「売らないと破産する」と反発、自然界にもホルマリンを含む食品がある事例を指摘した。専門家によるホルマリン残留検査で、天然フグと同レベルかそれ以下しか検出されず、厚生労働省が「食品衛生上、問題はない」との見解を出したことでさらに勢いづいた。結局、県が押し切られ、7月末に出荷の方針が決まった。

  一方、農林水産省は「衛生上の問題のみでなく、廃棄が望ましい」との立場を示し、日本消費者連盟は「経済性優先の出荷は許されない」と会員などに不買を呼びかけている。「安全」を主張する産地と、「安心」を望む消費者。国の見解が統一されない中、両者を結ぶフグの集散地・下関は厳しい選択を迫られた。

     ◇

  ホルマリン使用問題で注目を集める、フグ取扱量日本一の下関。背景や下関の動きを検証する。

(9/25)

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news01.asp?kiji=3262