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中央(港区)、日比谷(千代田区)、多摩(立川市)の三カ所にある都立図書館の場合、資料費は一九九九年度の計四億八千万円から本年度は二億円へ六割近くも減った。
このうち、日比谷図書館では、ここ数年で本の購入冊数が年間一万二千冊から四千冊へと大幅に減少した。雑誌も四百数十種類から本年度は二百数十種類まで減らされる見通しだ。
利用者からも「どうして新刊が入らないのか」といった不満が多く寄せられ、今年七月には状況を説明するチラシを館内に置き始めた。
中央と多摩の両図書館は昨年から、原則として一タイトルに付き両館で一冊だけ購入し、予算圧縮に努めている。両館で重複して購入してきた資料は、書庫に余裕がないことを理由に、両館のどちらかに一冊残した上で区立図書館などへ“放出”を始めている。
中央図書館の担当者は「区市町村の図書館は地域密着型の貸し出しサービスなどを、都立図書館は専門書など幅広い資料の収集・保存と、専門的なレファレンス(文献の紹介)サービスを行う方針だ」と、役割を分担して機能を特化すると説明する。
だが、新刊に占める都立図書館の購入割合は減り続ける一方だ。しかも、資料費を大幅に減らしているのは都立図書館だけではない。
日本図書館協会によると、二十三区内にある区立図書館は、昨年度までの九年間に百八十四館から二百十六館へ増えているが、資料費(予算ベース)は平均25%減った。
中でも中野(昨年度までの九年間で71%減)、千代田(同59%減)、豊島(同58%減)、港(同52%減)の各区は軒並み五割以上減らしている。
中野区ではさらに、図書館の数を現行の八館から減らす方向で検討している。図書館の削減に反対している「本町図書館とあゆむ会」のメンバーで、大学職員の伊藤毅さん(59)は「生涯学習の時代だと言いながら、図書館のような基本的な公共サービスを減らすのはおかしい」と訴える。
こうした状況に、日本図書館協会常務理事の松岡要さん(57)も「とんでもない話ですよ」と憤っている。
「もともと先進七カ国の中で、日本は人口当たりの図書館数が最下位。それなのに、最近では雑誌の購入を減らしたり、年鑑の購入を隔年にしたりする状況に追い込まれています。千二百万都民に対するサービスとしては考えられない事態です」と声を強める。
協会によると、人口十万人当たりの図書館数は、英国が八・八館、米国が五・八館、フランスが四・四館など先進七カ国平均で六・八館に。これに対し、日本は二・一館にとどまり、平均の三分の一に満たないという。
都内の状況も先進各国に比べると見劣りする。例えば、二十三区内の図書館数は国内のほかの地域より多いとされるが、人口十万人当たりではやはり二館台だ。図書館職員に占める司書の数は、全国平均が半数なのに対し、二十三区平均では四人に一人しかいない。
松岡さんは「資料費は、厳しい財政の中で削減しやすいと思われているようです。出版は東京の地場産業であり、中小企業振興の面からも考える必要があります」と指摘。その上で「中小出版社の専門書や、再刊されないような本は買うのも難しい状況です。図書の収集面で『空白の十年』になりかねません」と図書館が直面する冬の時代を危ぐしている。
文・森川清志/写真・中西祥子、石川裕子、坂本亜由理
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