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談合を追及する住民訴訟を起こした住民が、公正取引委員会で審判中の談合事件の記録を閲覧、コピーできるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第三小法廷(上田豊三裁判長)は9日、住民に「利害関係人」としての地位を認め、記録を閲覧謄写できるとする「情報アクセス権」を初めて認める判断を示した。そのうえで、閲覧とコピーを許した公取委の判断を合法として開示を認めた一審判決を支持。非開示とした二審判決を破棄して企業5社の請求を退けた。住民側の逆転勝訴が確定した。
4裁判官全員一致の判断だった。
●住民は「利害関係人」か
談合の疑いをもたれた企業は公取委の排除勧告などに不服がある場合、公取委に対して裁判手続きに似た審判手続きで、審決を求めることができる。そして独占禁止法69条は、事件の「利害関係人」は、審判開始決定後、公取委に記録の閲覧謄写を請求できると定めている。
今回の訴訟では、談合によって公共事業の入札価格がつり上げられ、余分な出費を強いられる自治体に代わって住民が「被害者」として住民訴訟を起こした場合、住民に「利害関係人」としての地位が認められるかどうかが争点となった。
第三小法廷は「住民は、地方自治法で自治体に代わって住民訴訟を起こす権利を認められている」と指摘。「審判記録を利用することの必要性や有用性は地方公共団体が自ら損害賠償請求をしている場合と異ならない」と述べ、住民を自治体と同様に「利害関係人に該当する」と結論づけた。
下級審では判断が分かれていた。一審・東京地裁は01年10月、「住民は談合事件の被害者であり、公取委による開示は違法ではない」とする初めての司法判断を示し、非開示を求めた企業側の請求を棄却した。しかし、二審・東京高裁は、住民訴訟の当事者であっても談合事件の「利害関係人」とはいえないと判断。自治体についても「審判への参加が認められていない場合や審判が確定していない段階」では利害関係人に当たらない、とする見解を示していた。
●開示は企業のプライバシー侵害か
情報開示の妥当性も争点だった。二審は「審判確定前の資料開示は営業秘密やプライバシー侵害に当たる」とする企業側の主張に理解を示して「違法行為があったと認定されていない段階で、審判資料を別の訴訟の証拠に用いることは法が予定していない」としていたが、上告審では大きな論点にはならず、第三小法廷は「公取委は事業者の秘密を除いて必要な事項を公表できる」とする一審の判断を追認した。
開示処分の取り消しを求めていたのは、日立造船、三菱重工業、NKK(現JFEエンジニアリング)、タクマ、川崎重工業の各社。全国の自治体や事業組合が発注したごみ焼却施設の建設をめぐり、公取委は99年8月、60カ所、受注総額9260億円について談合があったとして独禁法違反の疑いで排除勧告。さらに、「談合で工事費の10〜15%が不当に引き上げられた」として住民訴訟を起こした原告住民の求めに応じて、公取委は01年1月、審判中の事件記録を開示する決定をした。企業側は公取委に開示処分の取り消しを求めて提訴していた。企業側は排除勧告にも応じずに審判で争っている。
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<三菱重工業のコメント>
当社の主張が認められず残念だ。詳しいことは判決文を見ていないので、回答を差し控えさせていただく。(09/09 11:29)