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「この遊具は、座る部分が無くなっています。あっちは座席部分に突起があって危ないですね」
一斉点検に参加した杉並区母親クラブ連絡会長の鈴木真知子さん(54)は、同区内の公園で危険な遊具について、表情を曇らせながら説明してくれた。座る部分に突起がある遊具は、背もたれが壊れて留め具だけが残ったとみられるが、もとの形状が判別できないほど壊れていた。
鈴木さんは「息子が小さかった時、公園で壊れた遊具を見つけても『危ないわね』と思っただけでした。どこに言えばいいか分からなかったし…。今、あらためて点検すると、細かな問題点が見えてきます」と話す。
遊具の一斉点検は、夏休み前の七月、連絡協議会の呼びかけで傘下の母親クラブが三十二都道県で実施。東京都内では杉並区母親クラブ連絡会が参加したほか、関東では茨城、栃木、群馬の母親クラブが点検を行った。
点検のきっかけは二〇〇一年、箱ブランコなど公園遊具による重傷事故が社会問題化したため。連絡協議会は「遊び場の安全点検」を活動方針の一つに掲げていたが、「点検方法が分からない」という声が多く、実際に点検をしていた母親クラブは三割にとどまっていた。
このため、連絡協議会は遊具メーカーの業界団体や専門家の協力を得て、今年三月に「遊び場事故防止活動マニュアル」を作成し、これをもとに初の一斉点検を行った。
同マニュアルは、子どもの遊びについて「時には失敗し、転倒・落下・衝突などで負傷することもある。意欲的な遊びには危険が伴う」との考え方から「すべての危険や事故を無くそうとするのは無意味だ」と指摘。
子ども自身が大きな事故を避けるために小さなけがをする経験は、成長に欠かせない「善玉の危険(リスク)」と評価。その一方で、遊具の欠陥など重大事故の原因となる「悪玉の危険(ハザード)」は完全に除去することが必要だと強調する。
具体的には、遊具の「製造・設置」「利用・監督」「維持・管理」の各段階で危険度を診断できる十五項目のチェックリストを作った。
連絡協議会が試みに宮城県内分のリストを集計したところ、77%の公園で不具合が見つかった。内容別では「腐食・ひび割れなどの劣化、着地部のくぼみ」が最多の26%。「ガラス・ごみの散乱や落書きなど」が14%、「遊具の基礎が露出」が12%などと続いた。
都内では、杉並区母親クラブ連絡会が調べた公園五十カ所のうち、四十カ所でブランコや滑り台の不具合が見つかった。他の関東地区では、▽ブランコの鎖が外れる▽ブランコ下の地面にコンクリートの塊が露出▽滑り台の着地部に大きなくぼみ−などが報告された。
連絡協議会は今後、全国の点検結果をまとめ、関係機関に周知する。各母親クラブでも自治体などに改善を申し入れる。
堺誠一郎事務局長(56)は「遊具の安全対策で、日本は欧米に二十年遅れているといわれています。ほかの市民団体などにも呼び掛け、来年以降も一斉点検を続けたい」と話している。問い合わせは連絡協議会=電03(3797)8183=へ。
文・森川清志/写真・笠原和則、北村彰/紙面構成・長谷川美穂
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