2003年08月26日(火) 22時07分

住基ネット本格稼働　県内自治体、混乱なく　／長崎（毎日新聞）

　◇身分証明不携帯でカード交付に影響も
　住民基本台帳ネットワークシステム（住基ネット）が本格稼働した２５日、県内でも住民基本台帳カード（住基カード）の交付が始まった。即日交付は本庁だけの受け付けだったり、免許証、パスポートなどの写真付き証明が必要だが、それを知らずにこの日手に出来なかった人も半数近く出る所があった。一方、外部からの侵入の不安は依然残っており「個人情報が漏れる」と住民票コードを返却する動きも続いた。
　◆県
　住基ネットが住民サービスに利用されるのは各市町村の窓口が中心。県は市町村と国の調整役とシステムでの本人確認情報の中継点となっているほか、パスポート関係の３２事務で住基ネットを利用するがトラブルはなかった。
　県市町村課によると、国への情報提供をしていた昨年８月の１次稼働以降、住民コード通知票の誤配布など人為的なミスは数件あったが、情報漏えいなどシステム的な問題は起きていないという。今回も何らかのトラブルが出た場合は報告するよう通知していたが、担当者は「市町村からトラブルの報告はなく、順調に運用されたのではないか」と話していた。
　◆長崎市
　市民であることを証明する「ながさき市民カード」として交付を始めた。希望者にはその場で顔写真を撮って張り付ける。交付料は５００円。
　市民課の職員は午前８時に登庁、カード交付の準備を整え申請者を待った。支所も含めてこの日の申請者は５３人。男性（８６）は「パスポートの交付手続きなどが便利になると聞いて申請に来ました。情報が漏れるような心配はしていないが、個人情報が悪用されないよう願いたい」と話した。　申請に必要な免許証など身分証明書を忘れた人や交付に時間がかかって待てない人などもいて、５３人のうち即日カードを受けたのは２７人だった。
　伊藤一長市長もカードを手にし「今後は市独自のサービスにも利用できないか市民から広く意見を聴いて検討したい」と話していた。
　カード交付にかかわる３４人の職員は公的な目的以外に情報を使用しないよう研修も重ねてきた。市民課の田崎信義課長は「将来は役所に足を運ばなくてもいいようになり、高齢化社会には必要なシステム」と話した。
　また、住基ネットを使って居住地でなくても住民票が受けられる広域交付のサービスも始まり、同市では４人が交付を受けた。【松本光央】
　◇ネット混雑で支障／周知されれば増加へ
　◆佐世保市
　住基カードは男性６人、女性１人が交付申請した。５人は即日交付されたが、身分証明書を持っていなかった男性と女性計２人がカード照会書を住民票にある住所に郵送する手続きを取った。
　広域交付申請は三川内、早岐の両支所で各１件あった。三川内支所では神戸市の住民票の写しが申請されたが、本来１０秒程度で取得できるものが約２０分かかったという。市戸籍住民課は「ネットの混雑のためと考えられる」と話している。
　◆諌早市
　交付申請は３件。即日交付されたのは１件だけ。住民票（写し）の広域交付は５件だった。
　１０００枚分の住基カードを用意しており、山口昭憲・市民窓口課長は「まだ住基カードを知らない市民が多い。報道などを通じ周知されれば、身分証明に利用しようと申請する市民も増えるでしょう」と話している。
　◆大村市
　住基カードの交付手続きに関する電話問い合わせが２０件近くあったが、交付申請は６件で、即日交付は３件だった。住民票（写し）の広域交付は３件だった。
　◆島原市
　交付申請が５件で即日交付された。住民票（写し）の広域交付が１件あった。静かな滑り出しで、奥平富正・市民課長は「カードの交付は初めての作業なので、コンピューターへの入力間違いがないよう徹底した」と話していた。
　◇コード１６人分長与町に返還−−反対の市民団体
　住基ネットに反対する「いヤバイ！『住基ネット』」は、長与町役場を訪れ、抗議行動として町長に１６人分の住民票コードを返却した。メンバーはこの後、長崎市中心部の繁華街で通行人に住基ネットの問題点を訴え、ネットからの離脱を呼び掛けるビラを配った。夜には抗議集会も開いた。
　会は、システムの技術、運用、制度面のいずれも個人情報の保護が十分ではなく、漏れたり、悪用されたりする危険性があると指摘。市町村にネットからの離脱などを求めている。会は２１日には長崎市へ２７３人分の住民票コードも返却し、ネットからの離脱を求める要望書を提出している。【横田信行】（毎日新聞）

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