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【1円玉攻防に悲鳴】
「レギュラー1リットルのもうけ? そんなの5円もない。毎日、赤字でやってられない」と吐き捨てるのは、東京から埼玉に続く川越街道(国道254号)沿いにあるセルフ方式のGS店長。
同店が掲げる看板の値段はリッター92円。同街道から国道16号沿いに続く首都圏の最激戦地を一回りした取材時の最安値だった。
同店近くには、表示価格こそ92円ながら、プリペイドカードを事前に2万円分買えば、リッターで3円を引くセルフ店もあり、事実上、闘いは80円台の攻防に突入している。リッター5円以下の利益では、車1台に50リットル売っても250円にしかならない計算で、熾烈な体力勝負の様相だ。
【1000店以上がバタバタ】
石油情報センターによると、全国のGSは平成6年度の約6万店をピークに毎年1000店以上が閉店する状況が続き、今年3月末には前年より約1300店減って、5万1294店にまで減少した。
業界関係者は「かつてはリッター20円の利益があったが、セルフ店の登場やデフレで、10円を割った頃から採算がとれず、撤退するGSが増え始めた」と解説する。
昨年の同時期、川越街道から少し離れたGS密集地域では、リッター85円前後にまで叩き合いが激化していた。92円の今年は、当時に比べれば、まだ余裕があるようにもみえるが、実情は昨年以上に苦しいという。
「今年はイラク戦争の影響で、昨年末から原油価格が上昇した。だが、販売価格がスライドして上がり切らないうち戦争が終わり、GSの利益が圧縮された。今も昨年に比べて卸価格は2円ほど高く、長梅雨の影響で7月の行楽需要も伸びずダブルパンチとなった」(業界関係者)
【叩き合い】
競争をより激化させているのがセルフ店の増加。同センターによれば、10年の解禁以来、今年3月末までにセルフ店は約2500店に急増し、「初期のセルフ店は通常のフルサービス店と3、4円の差をつけ、通常店より量を2、3倍売ることで採算が取れた」(同)。
だが、今や埼玉や千葉などセルフ店が集中した地域では、セルフ同士の価格競争が発生。従来の薄利多売は困難となってしまった。
加えて、フル店も生き残りをかけ、セルフに負けない価格をつける店があり、国道16号では両者が揃って93円の看板を掲げる地域もあった。
冒頭の店長も「フル店が同等の値段をつけてくる。それより下げないとお客さんは納得しないが、価格を下げても需要は増えない」と嘆く。
【氷河期へ】
両者の価格が同等なら、フル店は、オイルやバッテリーの交換、手洗い洗車など人手のかかる高マージンの“油外商品”の販売で、採算を取る努力ができる。だが、セルフは、そうした商品を売るスタッフがいない。
業界関係者はセルフ店の苦しい内情を「フルからセルフに変わるには数千万円の設備投資が必要なうえ、地域によっては費用を価格に上乗せできず、セルフの方が経営が苦しく、赤字の店も少なくない」と明かす。
今回、取材した地域では、廃業したGSの建物が数多くあった。セルフが増え続ける今、GS廃業は今後も加速しそうな雲行きだ。
ZAKZAK 2003/08/14