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■悲 鳴■
「夏休みも返上し、応援部隊も投入しているが処理が追いつかない」。東京三菱銀行の住宅ローン担当部署はうれしい悲鳴を上げている。同行が六月九日から発売した最長三十年の固定型ローンは、公庫より低い金利とともに発売直後に長期金利の急上昇も重なって申し込みが殺到。従来一年を要した五千億円分の契約獲得をわずか三週間で達成、販売を打ち切った。
三井住友銀行も借り換え獲得件数が金利上昇前の五割増となり、担当者は「例年なら夏場は閑散期だが今年は違う」と鼻息が荒い。大手各行は今月一日から五年以上の固定型商品を中心に金利を引き上げたが、三井住友は最長三十五年の超長期固定ローンの金利を据え置いた。浮足立つ利用者を圧倒的に取り込む戦略商品に据える構えだ。
公庫の基準金利も九月二日から年2・4%に引き上げられるが、広報担当者は「今ならまだ2・0%の金利適用期間なので早めに申し込んでほしい」とアピール。公庫のホームページへの一日平均アクセス件数は、七月上旬以降、七割増にはね上がっている。
■待 望■
従来、銀行の長期固定型ローンは金利が割高で、魅力的な商品は少なかった。公庫という“民業圧迫”の要因ばかりか、「日本には安定的に長期資金を調達できる市場がない」(みずほ銀行)中で、長期・低利の固定ローンを無理に販売すれば、生保のように将来の金利動向次第で逆ざやを抱え込む恐れもある。
ところが最近、銀行が積極姿勢に転じた背景について、東京FPコンサルティングの紀平正幸代表取締役は「新型住宅ローン登場による競合激化の前に顧客を囲い込む狙いがあるのではないか」と指摘する。
公庫と民間の提携による新型住宅ローンは、安定した長期資金調達を公庫が一手に引き受けることで民間単独商品の弱点を解消。民間でも「融資限度額五千万円、返済期間二十−三十五年」の長期固定型ローンを継続して販売しやすくなる。
金利は現在の公庫並みになるとみられているが、銀行以外の新規参入も予想され、競争による格差も出てきそうだ。利用者にとっては選択肢が広がるメリットもあり、今後の住宅ローン市場を大きく変える可能性も秘める。
■不 安■
公庫との提携にいち早く名乗りを上げたみずほは「長期固定商品に対する一定の需要は常にあるし、新しい市場が育てば将来は公庫なしでもやっていける」(個人商品開発部)と前向きな姿勢を示す。
しかし、早くから住宅ローンに力を注いできたある大手行首脳は新型ローンについて「正直に言えばやめてほしい。公庫による新たな民業圧迫だ」と本音を漏らす。
新生銀行と組み、新型ローンと同じ仕組みで長期固定商品を販売しているグッドローンの伊藤雅仁社長は「公庫の新型ローンは銀行が単独融資で得られるはずの収益を外部(公庫や投資家)に出してしまうことになり、銀行にとってうまみが少なくなる」と分析する。
企業向け融資が低迷する中で、住宅ローンは銀行の貴重な収益源。だが、競争激化とともに、厳しい所得環境の中で返済困難に陥るケースも増加傾向を示しており、住宅ローン市場の優勝劣敗は銀行経営そのものを左右する“勝負”にもなりそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030810/mng_____kakushin000.shtml