2003年08月07日(木) 17時21分
レッドハットがSCOを提訴、弁護基金も設立(WIRED)
恐怖や不安はほとんどない。もちろん少しの疑いもない。
今週また新たにリナックスをめぐる訴訟騒ぎがあったにもかかわらず、4〜7日(米国時間)までサンフランシスコで開催の今年の『
http://www.linuxworldexpo.com/ リナックスワールド・コンファレンス・アンド・エキスポ』は、オープンソースのオペレーティング・システム(OS)がかつてない栄光の時代へと進んでいるという確信に満ちあふれている。
「リナックスがこんなにうまくいっていなかったら、誰もわざわざ提訴しようなどと考えなかっただろう」と、オープンソース開発者のフランク・ゴースキン氏は話す。「リナックスワールドを見て回ると、ほんの数年間でどれだけ前進したかがよくわかる。もはや何があろうと、誰であろうと、リナックスを止めることはできない」
米SCOグループ社(旧カルデラ・インターナショナル社)は、
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030515101.html リナックス・ユーザーが同社の知的所有権を侵害しているという主張(日本語版記事)を強めているが、リナックスワールドの参加者の多くは話題にもしたがらない。
だが、
http://www.redhat.com/ 米レッドハット社のブースに集まって、ポケットから『オープンソース・ナウ基金』への寄付金を出す人たちの間では、さすがにこの話題を耳にする。この弁護基金は、SCOグループ社の訴訟により実際に賠償金の支払いが命じられることになった場合に、小規模のリナックス開発・運用会社を保護する目的で新設された。
レッドハット社は4日の記者会見で、この基金を設立して100万ドルを拠出したこと、さらに自らSCOグループ社を提訴したことを発表した。
レッドハット社は、SCOグループ社が不当で欺瞞的な商行為により、「レッドハット社をはじめとしたリナックス配布企業に打撃を与えることを意図して……リナックスの周囲に恐怖と不安と疑いの雰囲気」を作り出そうとしたことを訴えている。
レッドハット社のマシュー・ズーリック最高経営責任者(CEO)は、4日の記者会見と5日午後のリナックスワールドでの基調講演で、聞き手に対し、「SCOグループ社の遠回しな脅迫と非難」にうんざりしていると繰り返し説明した。
「本当にもうたくさんだ。われわれはこれ以上彼らにリナックスを捕虜にとらせておくわけにはいかない」とズーリックCEO。
ズーリックCEOは、SCOグループ社についての新たな報道を聞くたびに怒りがこみあげてきたと話す。その上、最近の電話会見でレッドハット社が知的所有権侵害者として名指しされたため、ついにズーリックCEOの堪忍袋の緒が切れてしまった。
「レッドハット社がSCOグループ社の知的所有権を侵害しているのかどうか、裁判官に決断を下してもらいたい。……われわれは真実を求めているのだ」とズーリックCEOは言う。「SCOグループ社には、法廷に出てくるか、口を閉ざすかのどちらかにしてほしいと思う」
レッドハット社の反訴は、多くのリナックス開発者がどこか名のある企業にやってもらいたいと思っていたことだ。このような不確定要素によって、今後企業のリナックス導入が阻まれるのではないかと懸念している人たちもいる。
この面倒な騒ぎの中心となっているのは、SCOグループ社が米IBM社を相手どって起こした数十億ドルの訴訟だが、法律関係者によればこの裁判は2005年までは開かれないだろうという。
「SCOグループ社とIBM社の裁判を進めようと誰かが躍起になっているという様子はまったく見られない」とハーベイ・シャピロ弁護士は話す。「それに、もし裁判が始まったとしても、すぐに解決がつくとは思えない」
この争いは今年3月に始まった。SCOグループ社がIBM社に対し、SCOグループ社の所有する『UNIXシステムV』のコードを『リナックス・カーネル』に使用したことによってUNIXを潰そうとしているとして
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030310101.html 約10億ドルを要求する訴訟を起こしたのだ(日本語版記事)。SCOグループ社の訴えによれば、IBM社は自社のリナックス部門を拡大するためにこうした不正利用を行なっているのだという。
その後SCOグループ社は、IBM社に対する損害賠償要求を30億ドル以上に引き上げた。7月21日には、SCOグループ社はすべての商用リナックスユーザーが海賊行為を行なっているとする声明を発表し、そうした行為への法的措置を免れることができるよう
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030722102.html ライセンスを提供すると述べた(日本語版記事)。
SCOグループ社は5日、ライセンス価格の詳細を公表した。このライセンスによって、リナックスを使いつづけたいというすべての企業に恩恵を授けようというわけだ。
初期の特定期間中は、リナックスを単一ユーザーのデスクトップ・システムで利用する場合は199ドル、単一CPUのサーバー上で利用する場合は699ドルという価格になっている。期間が終了する10月15日以降は、サーバーの場合の価格は1399ドルに跳ね上がる。
レッドハット社のデスクトップ用リナックスの通常版価格は39ドルだ。
この価格急騰のニュースに、リナックスワールドの参加者たちは大騒ぎした。
「それはつまり……基本的なクラスターだけで2万ドルもかかるということか? スーパーコンピューターを買うお金がないから、自分でつなげているというのに?」と、シアトル在住のプログラマー、マイク・クリスティー氏は話す。
「全てのリナックス・ユーザーがSCOグループ社にライセンス使用料を払う日が来るなどということは、ビル・ゲイツ氏がウィンドウズの全プログラムは100%安全になったと発表するのと同じくらいあり得ないことだ」とクリスティー氏。
SCOグループ社は5日の電話会見で、レッドハット社の提訴はリナックスに損害を与えるだけだとする痛烈なコメントを発表した。SCOグループ社のダール・マクブライドCEOによると、同社の社員たちは「歓迎されるとは思えない」ため、リナックスワールドには寄りつかないようにしているという。
5日にSCOグループ社のサイトに掲載された同社とレッドハット社との間でやりとりされた
http://ir.sco.com/ReleaseDetail.cfm?ReleaseID=115476 書簡のなかで、マクブライドCEOは、レッドハット社の訴訟に対して「著作権侵害と謀議についてのさらなる反訴で応じることもあり得る」と警告している。
『くたばれ、SCO!!!』と描かれたTシャツを着てリナックスワールドを訪れたシカゴ在住のプログラマー、ジム・バーティンゴ氏は「がんばれレッドハット、引っ込めSCO」と叫んだ。
「そろそろ開発の仕事に戻ってもいいかな? もうこんなごたごたにはうんざりなんだ。本当はこのTシャツにだってうんざりしてきた。これからホテルに帰って着替えるよ」とバーティンゴ氏は語った。
[日本語版:遠山美智子/高森郁哉]日本語版関連記事
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