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2003年08月06日(水) 17時11分

固定電話を解約して携帯電話だけを利用する人が米国で増加WIRED

 ワシントン発——ブランドン・フォーゲルさんのベッドサイドにあるカールコード付きの固定電話は、過去の遺物と化しつつあった。

 シカゴ在住の大学院生であるフォーゲルさんは、ほとんどの通話に携帯電話を使用していた。そして、ダイヤルアップのインターネット接続をケーブルテレビ回線に換えたとき、通常の固定電話は、自分の生活にとって重要なものではないことに気づいた。

 そこでフォーゲルさんは、「電話線を切り」、携帯電話だけで生活する人々の仲間入りをした。こうした人たちは、米国に現在約750万人も存在する。

 こうした流れの先頭に立っているのは、学生、大学を卒業したばかりの若者、それに若いビジネスマンだ。

 ワシントンを本拠地とする業界団体、 http://www.wow-com.com/ 米国セルラー通信・インターネット協会(CTIA)は「固定電話に別れを告げた若い人々が、その後年をとると固定電話に戻ってくるのか、あるいは携帯電話が今後もこうした層の需要すべてに対する受け皿となっていくのかは、興味深いところだ」と述べている。

 回線数では、携帯電話の台数は徐々に固定電話に近づきつつある。国際電気通信連合(ITU)によると、携帯電話はすでに米国全体の電話台数の約43%を占めているという。ちなみに2000年では37%だった。

 一方、米国の固定電話台数は2000年以降、500万台以上——3%近く——減少したという報告が今年6月、米連邦通信委員会(FCC)から出されている。

 だが米国は、携帯電話への移行で先陣を切っているわけではない。すでに全世界の電話の半数以上が携帯電話だ。

 携帯電話の台数が固定電話の台数を最初に上回ったのは、発展途上国の一部の国々だった。こうした国では、まだ固定電話網が整備されていない段階で、携帯電話技術が登場したのだ。たとえばカンボジアでは、電話の90%近くが携帯電話だ。

 ヨーロッパ諸国で携帯電話の台数が従来の電話の数を上回りはじめたのは、1990年代後半だった。その理由の1つは、電話料金システムが携帯電話の方が有利だったからだとアナリストたちは述べている。ヨーロッパ諸国には通常、定額料金で固定電話から市内通話を無制限に利用できる「かけ放題」サービス——米国の固定電話サービスの大きな利点の1つ——がない。

 また、米国以外で通常の固定電話サービスを導入するには、数ヵ月間待たされるうえ、法外な保証金を支払わなければならない場合が多い。そのため、買ってきてすぐに使える携帯電話に人気が集まるのだ。

 米国での初期モデルは自動車電話として売り出されたため、人気は今ひとつだった。だが米国は現在、その遅れを取り戻しつつある。

 米国では現在すでに、国民の約2人に1人が携帯電話を所有している。米AT&T社で社史編纂を担当する、シェルドン・ホックハイザー氏によると、固定電話がこのレベルまで普及するには、100年近くかかったという。

 通信関連市場の調査を行なっている http://www.primetrica.com/ 米プリメトリカ社(本部サンディエゴ)の最近の調査で、約半数の世帯が、ワイヤレスの価格が妥当であれば固定電話を解約するだろうと述べている。

 大半の人にとって価格は大きな要因だが、便利だから携帯電話へ切り替えるという場合も多い。シカゴのフォーゲルさんは、ここ4年間で4回引越しをしている。電話番号を変更したり、引っ越しごとに設置料金を支払う厄介さを考えると、固定電話の解約も比較的簡単に決断できたという。

 フォーゲルさんは、固定電話と携帯電話の両方を持つのをやめ、携帯電話だけに絞ったことで、月に30〜40ドル節約できたと見積っている。

 フォーゲルさんのように引越しの多い人が1ヵ所に住居を定めた場合、固定電話に戻るのかどうかは、業界が現在調査している問題の1つだ。

 これまでのところ、携帯電話の利用で固定電話を解約した利用者の3〜5%が、「同じサービスに二重に料金を支払うだけのメリットはない」としていると、CTIAは述べている。

 各電話会社は、携帯電話への移行を憂慮していないと述べる。携帯電話をセットにしたサービスや、オプションに携帯電話をつけるといったサービスで、この変化に適応しているという。

 米ベライゾン・コミュニケーションズ社のリンク・ホーウィング副社長補佐(インターネット技術戦略担当)は、携帯電話利用者数の増加を気にしないのは「この増加によって電気通信業界全体の市場が膨らむ」からだと語っている。

 ベライゾン社は携帯電話部門を抱えるだけでなく、デジタル加入者線(DSL)による高速インターネット接続などの新しいサービスを提供することで、固定電話網の近代化も図っている。DSLによるインターネット接続の場合、電話回線を利用するものの、新たに別の回線を引く必要はない。

 とはいえ、変化には困難が伴うようだ。固定電話を解約した人たちの多くは、通話品質のばらつきといった携帯電話の不便さはさほど気にならないとしても、固定電話が与えてくれたちょっとした楽しみがなくなったのがつまらないと感じている。

 「家に帰って留守電をチェックして、ランプが点滅していれば喜んで、光ってないとがっかりしていた。あれが懐かしい」とフォーゲルさん。

 留守番電話が一般的になったのは、米国では1980年代の半ばから後半にかけてのことだった。現在では多くの固定電話加入利用者がボイスメールを使用している。ということは、現在の利用者は、メッセージがあることを示す断続的な発信音に親しみを覚えるようになってきているのかもしれない。

[日本語版:天野美保/長谷 睦]日本語版関連記事

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