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日赤が過去十三カ月間の献血者のうち、B、C型肝炎やエイズなどの病原体に感染していた者について調べたところ、それ以前の献血血液を原料とした輸血用製剤が大量に医療機関に出荷され、ほとんど使用されていたことがわかった。感染の可能性は低いとはいえ疑いは完全に否定し切れない。
こうした事態が起きるのは、感染直後は病原体が増殖しておらず、抗体も十分にできていないため、検査をすり抜けてしまうからだ。
この空白期間は、一次検査よりも感度の高い「核酸増幅検査」(NAT)のような二次検査で短縮できるが、それにも限界がある。
日赤が厚労省の指導を受け、従来の二次検査に加え一次検査の場合でも陽性の献血者について、可能な限り過去の献血歴を遡(さかのぼ)って調べ、必要な情報を医療機関に提供することを決めたのは、国民の不安を解消するために当然といえよう。
日赤は世界に先駆けて一九八九年にC型肝炎ウイルスの一次検査、九九年にNATをそれぞれ全国規模で導入し、「世界で最も安全な血液を供給している」と胸を張った。
だが、その自信が慢心を生んだ。
欧州では、輸血用製剤について病原体の感染力を失わせる不活化処理の導入を始めている。不活化されていない血漿(けっしょう)については、有効期間が長い特性を利用して採血後すぐには出荷せず、一定期間保管して検査すり抜けの危険性を減らしている。
日本では定期的に献血する国民の割合が欧州ほど多くなく、一定期間保管する方式の効果があまり期待できないならば、日赤と厚労省は輸血用製剤の不活化の開発に全力を挙げるべきである。医療機関に対しては、輸血を受けた患者の検査を定期的に行うよう徹底が必要だ。
輸血によるB型肝炎ウイルスの感染がもとで死亡したことが二日に判明した女性の場合も、こうした検査が行われていれば重症化を防げた可能性がある。
血液が未知の病原体を含む危険性を常に秘めている以上、血液製剤全体の使用量を減らすことも重要だ。患者一人当たりの使用量が極端に多い医療機関が少なくないからだ。
薬害エイズ事件を契機に、安全な血液製剤の安定供給などを目的とする新血液法が七月末に施行された。日赤、厚労省双方は、今度こそ、これにこたえる責任がある。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030804/col_____sha_____002.shtml