2003年08月04日(月) 13時29分
<わき水>富士山周辺で減少 地下水の工業用利用が原因(毎日新聞)
豊富だった富士山周辺のわき水が減少している。東洋一といわれる静岡県清水町の柿田川の湧水(ゆうすい)量は1960年代からジリジリと減り、今では、かつての約8割になったといわれる。同川周辺では、ほぼ枯れたわき水もある。富士山ろくの開発が進み、地下水が工業用に利用され続けてきたのが原因とみられ、県は今秋、地下水を利用している企業との話し合いを始める。【中村牧生】
柿田川は、わき水だけが作る長さ約1.2キロの1級河川で、環境省の「名水百選」にも選ばれた。国土交通省中部地方整備局沼津工事事務所によると、湧水量は63年は日量130万トンだったのが、現在は100〜110万トン。80年代初めには100万トンを切ったこともあった。
伏流水が街中を流れ「水の都」とも呼ばれる三島市。同市の庭園「楽寿園」の小浜池は豊富な水がわき出し、国天然記念物にも指定されたが水位が下がり続け、今ではほぼ干上がっている。
富士山周辺のわき水は、多量の水を使う企業に注目され、早くから製紙工場やアルミニウムの精錬工場などが進出した。高度成長期には、過度の地下水のくみ上げで地盤沈下が問題化し、県は71年、条例で井戸の新設を制限した。
新たな問題も起きている。これまで「わき水が出ない」とされ、条例による規制区域とならなかった富士山東側の地域でも100メートルを超す深い井戸を掘れば地下水脈まで達することが分かり、企業進出が進む。
県は、富士山の環境保全などをうたい、山梨県と共同で制定した「富士山憲章」が今年11月、5周年を迎えるのを機に、条例の規制区域外に進出した企業と取水のあり方や改善策を話し合う。県環境政策室の朝比奈均技監は「企業には企業の論理があると思うが、富士山の環境保全のために何ができるかを一緒に考えたい」と語る。
富士山の地下水に詳しい静岡大の土隆一名誉教授(自然地理学)は「富士山の1日当たりの湧水量は約529万トンで毎年大きくは変わらない。使い過ぎれば枯れてしまうのは当然だ」と指摘する。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030804-00001048-mai-soci