2003年07月24日(木) 15時15分
<盗難通帳>巧妙化する引き出し手口(毎日新聞)
社会問題化している盗難通帳による預貯金の不正引き出し事件。届け出印の印影をパソコンなどを使って偽造するのが基本的な手口だが、毎日新聞や被害者支援弁護団に寄せられた情報などからは、引き出しの手口が金融機関の死角を突いてますます巧妙化している実態が浮かび上がる。金融機関側も対策に躍起だが、対応しきれていない。支援弁護団などは「面倒でも、窓口での暗証番号確認などを行うべきだ」と提言している。【江田将宏】
◆引き出し役◆
昨年10月、大阪市内の銀行に喪服姿の女性が現れた。涙で目をはらしながら定期預金計400万円を引き出したが、この定期預金証書は盗まれたものだった。通常、定期預金の引き出しには注意を払う銀行側も、緊急事態を装う“名演技”にあっさりだまされた。
不正引き出しでは、「窃盗役」「引き出し役」などグループ内での役割分担が進んでいるという。大阪府警国際捜査課が先月、詐欺容疑などで逮捕した女(41)は、大阪市などの郵便局で計15回、総額約3300万円を引き出していたが、「知人に紹介されたアルバイトだった」と供述。手当は奪った額の5%だったという。
◆新法逃れ◆
今年5月、結婚資金を奪われた大阪府堺市の男性(33)の場合、7回にわたって計670万円を引き出されたが、1回の額はいずれも200万円未満だった。今年1月施行の本人確認法で、200万円以上の引き出しには公的証明書での本人確認が義務付けられており、これを逃れる目的だったとみられる。また、この口座には引き出しの直前に1100円が何者かから入金されていた。被害届の有無の確認が目的だったようだ。
◆対策は◆
銀行側は通帳に照合用の印影を残す「副印鑑制度」の廃止を進め、モニター画面で届け出印と請求書の印影を照合するシステムにしている。郵便局もパソコンへの読み取りを防ぐため、通帳の印影に特殊なシールを張るなどしているが、いずれも新規発行と更新分に限られるため、十分な効果が出ていないという。
支援弁護団は、窓口での暗証番号確認▽運転免許証などの提示義務付け▽免許証の偽造を見抜く簡易鑑定機の導入−−などを求めているが、「取引の簡便性」などを理由に実現には至っていない。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030724-00001068-mai-soci