2003年07月18日(金) 15時30分
HTM Lメールのリスクと Web ビーコン(japan.internet.com)
ここ半年で HTML メールの導入事例は一気に増えました。しかし、その一方で送り手側がエンドユーザーにそのリスクを正しく伝えることができていない、または送り手自身それを認識していない、という現状を危ぶむ声も聞かれます。
HTML メールマーケティング実施時に意識しなければならない特殊なリスクとして、「セキュリティ」「プライバシー」などがありますが、今回はそのうちの、プライバシーに焦点を当ててお話いたします。また、このプライバシーというリスクの存在が、半歩先のメールマーケティングをどのような姿に変えていくのか、についても探っていきたいと思います。
HTML メール送付時の効果測定:「Web ビーコン」とは?
まずは、HTML メールの効果測定を行う際に一般的にどのようなことが行われているか、もう一度確認してみましょう。図を見てください。
たとえば、図のような仕組みを用意すれば、どの ID を持ったメールが表示(=開封)されて、どの ID を持ったメールが表示されなかったかを把握することができます。また、上図の f で cookie を発行する場合、これを追跡することで、ユーザーが会員登録した、購買行動を起こした、などの情報を取得することもできます。
この効果測定 ID を仕込んだ画像がWeb ビーコン(Web バグ)と呼ばれるものです。デザイン上の汎用性を重視し、1ピクセルの透明 GIF など、ユーザーが視認しにくい画像を使うケースが一般的です。
Web ビーコンのリスク
Web ビーコンはマーケティング的にはきわめて強力な仕組みであり、うまく活用できればメールマーケティング効果を大きく向上できるものですが、その反面、自社顧客の意図を越えてプライバシーに踏み込んでしまう危険性もあります。
HTML メールにおいては、配信側がメールアドレスと対応した ID を準備しさえすれば、「受信者の同意なしに」「個人特定可能な形で」情報収集することが可能です。ここに、HTML メールと Web ビーコンを組み合わせた場合の危険性があります。
当然のことながら、プライバシーポリシー記述と Web ビーコン利用形態に矛盾がある場合、顧客の信頼を裏切ることになってしまいます。2003年5月30日に
公布 された個人情報保護法では、情報取得目的の特定、通知、目的外利用の禁止が義務として定められていますから、プライバシーポリシー構築時に Web サイトでの利用しか考慮していなかった場合、メールでの利用まで考慮した見直しを早急に行う必要があるでしょう。
また、この Web ビーコンを悪用している最たる例が、迷惑メールにおける利用です。ランダムに生成されたリストに対して Web ビーコン入りのメールを送り、反応のないアドレスを削除するだけで、簡単に有効なアドレスのリストを作ることができます。日本ではまだ少ないようですが、米国からの迷惑メールでは Web ビーコン入りのものが一般的になりつつあるようです。
徐々に進む Web ビーコン対策
米国での迷惑メール業者による Web ビーコン濫用をうけて、対策も徐々に進んでいます。
Microsoft の Outlook や Hotmail などでは、HTML メールに含まれる画像を表示しない機能の標準化が進んでいます。こうした機能を利用すると、アドレスリストに登録してあるアドレスからのメールはそのまま画像を表示しますが、そうでないメールでは「画像を表示する」と書かれたリンクをクリックしない限り、画像は表示されません。画像が表示されない限り、Web ビーコンも機能しません。
こうした仕様は、迷惑メールの社会的影響度や、個人ユーザーへのプライバシー意識の浸透を考えると、今後メールソフトの標準的な機能となってくると思われます。その場合、ユーザーが「この人/企業からのメールは読む」と明確に意思表示したメールだけが読まれる状況になっていくはずです。
プライバシー意識の高まりが促すメールマーケティングの変化
一度どこかで入力されたメールアドレスに明確な同意のないメールを送りつけたり、きちんと同意をとるプロセスを省いて情報収集したり、という姿勢は、これまでは珍しくはない光景でした。確かに、そうして顧客のプライバシー権利を過小評価すれば、過小評価した分だけマーケティングコストを削減することができます。
しかし、本記事で述べたような環境変化の傾向を考えると、そのようなメールマーケティングは、今後すぐに退場を迫られるようになるでしょう。では、そうした状況の中で、どこまで、何に対してコストをかければ、自社顧客が「読む」ことに同意してくれる信頼関係を維持できるのでしょうか?
その鍵のひとつは、「プライバシーポリシー」と「顧客に提供するベネフィット」との関係を明確にすること、にあると思います。
どのような個人情報を提供すれば、どのようなベネフィットがあるのか。これを顧客に対し明確に提示し、そのルールをきちんと徹底すること。それが、今、メールマーケティングに求められていることなのではないでしょうか?
次回はその観点に立って、「顧客に提供するベネフィット」を意識したプライバシーポリシー構築の仕方を考えてみたいと思います。
注:本記事の作成においては、高木浩光氏(
http://staff.aist.go.jp/takagi.hiromitsu/ )の
指摘 をはじめとした、一連のネット上での議論に多くを触発されました。
(執筆:阿部樹、監修:塚田耕司)
記事提供:
HTMLメールマーケティングガイド
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