2003年07月18日(金) 00時00分
大学への前納入学金は辞退者に返還しなければならない、という… (東京新聞)
大学への前納入学金は辞退者に返還しなければならない、という裁判所の命令は、教育をめぐる世情の推移を映し出している▼いったん納めた学費は返しませんよ、という「既納学費不返還原則」なるものが久しくまかり通っていた。学則に織り込んでいるところもある。受験生の側は「そりゃひどい」と思いながらも、たいていはこれに従ってきた▼それが昨今は「入試の理不尽」として、裁判に訴えることが多くなった。背景には、受験生と大学側との「需給関係」の変化がある。少子化による受験生の減少が、大学、とくに私学の経営を困難なものにしているからだ。受験側のほうが強気である▼学問、教育の分野にも、競争原理、市場原理が入り込んでいる。なんせ、投資格付け機関から、学問の府が財政健全度の評価を受ける時代である。「親方日の丸」で安穏にやってきた国立大学も「法人化」で市場のあらしに投げ込まれる▼今度の京都地裁による入学金返還命令が「消費者契約法」違反によるものであるのは象徴的だ。この法律は消費者の利益を守るためのもの。判決は、同法が労働契約以外の消費者契約を対象としており、在学契約にも適用される、とした。入学金は「学生の地位を取得する対価」ということになる▼こんどの判決は、二年ほど前に施行された同法の行方にも大きな影響を与えるだろう。高額なキャンセル料や賃貸住宅の敷金をめぐる訴訟で、この法律が「消費者の武器」として活用され始めているからだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20030718/col_____hissen__000.shtml