2003年07月16日(水) 13時49分
<爆弾事件>ネットに氾濫 地雷もサリンも 規制は困難(毎日新聞)
福井市で13日発生した手製爆弾爆発事件と静岡県裾野市で先月末起きた宅配荷物爆発事件は、いずれもインターネットが絡んでいた。爆弾事件では無職の男(33)がネットから情報を得て爆弾を自作したといい、裾野市の事件はヤフーのネットオークションで出品・販売された砲弾が爆発した。ネット上ではサリン製造方法まで飛び交うが、こうした「危険な情報」は、表現の自由などとかかわるため規制が困難なのが実情だ。【吉田勝、川上晃弘】
■製造法詳しく
ネット上には、犯罪に結びつく可能性のある情報を掲載したホームページ(HP)がはんらんしている。さまざまな種類の爆弾、爆薬の製造、使用方法を詳しく掲載したHPをはじめ、▽サリンの作り方▽印鑑や健康保険証の偽造方法▽違法薬物の輸入方法▽変造硬貨を100円玉に見せかけて使う方法——など数えきれないほどだ。
爆弾の材料は合法的に入手できるものが多い。あるサイトには「○○は身分証明書なしに薬局で買う」などと書かれている。実験結果を併記したHPや、「より良き社会を構築するため、すべてを否定しなくてはならない」などと破壊行為の示唆とも受け取れる文章を載せたHPさえある。
しかし、他人の誹謗(ひぼう)・中傷などの例外を除いて、どんなに危ない情報でも直接取り締まることはできない。福井市の事件を捜査している福井県警のハイテク犯罪支援室は「爆弾製造法などネット上の情報を包括的に規制する法律は今のところない」という。
ネットワーク犯罪に詳しい園田寿・甲南大教授(刑法)は「ネット上の有害情報をすべて規制していくのは、発信者側の言論・表現の自由と、受け手側の知る権利の問題があり、現状では難しい。我々はインターネットというメディアを選択してしまった以上、害悪性を議論しても仕方がない。今のところ、受け手側が有害情報とうまく付き合っていくしかないのではないか」と話している。
■公然と売買
「旧日本陸軍38式野砲」「ソ連のRGD—33手榴(りゅう)弾」「ドイツのガラス地雷」「ソ連のVGDライフル発射擲(てき)弾」——。ネットオークション最大手のヤフーが運営するサイトでは、裾野市での事件の後も、こうした出品物が公然と並んだ。ヤフーによると、事件後の砲弾類の出品は数十点。事件前の数百点から激減したとはいえ、なくなってはいない。
例えば「旧日本陸軍38式野砲」は、希望落札価格2万5000円。砲弾と薬きょうの写真17枚が掲載され、「使用済みのものですので火薬は入っておりません」などと記されていた。
ヤフーの自主ルールでは、「出品をお断りする商品」に、従来「銃器、弾丸あるいは主として武器として使用される目的を持つ商品」が含まれていた。さらに、事件を受けて「使用済み弾丸」についても禁止商品として明示した。それでも、画面上の写真で明らかに弾薬が入っておらず安全と確認できれば、出品を認めるという。
静岡県警によると、使用済みの砲弾でも火薬が残っていれば火薬類取締法違反に問われるが、火薬がなければ「ただの鉄くず」の扱いだ。
ヤフーは24時間体制で出品物をチェックしており、違反があると出品を削除し、法律に触れる疑いがあれば警察に通報する。だが、ヤフーオークションの常時出品数は400万点を超える。担当者は「すぐ落札される出品物も多く、チェックには限界がある。取引の主体はあくまで売り手と買い手。ヤフーには警察のような捜査権限はない」と話す。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030716-00001081-mai-soci