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■あくまで争う
「不受理は住民の安全確保と不安を抱かせないための措置だ」。船橋市は最高裁の判断を受けても全面的に争う姿勢を示している。
同市は県内の自治体で唯一、オウム信者との同種の訴訟を抱えている。今年一月、同市内のマンションへの転入を届け出たオウム信者の女性の転入届を不受理にしたことが原因だった。
処分当時は、既に全国の地裁、高裁で自治体の敗訴判決が相次ぎ、不利は決定的な情勢だった。その中で不受理処分を“強行”したことについて、市の担当者は「東葛地区ではオウムと住民のあつれきがあった」と説明する。
■連絡協議会
東葛地区では一九九九年以降、松戸市や柏市、流山市に教団幹部や信者の転入が相次いだ。不安を感じた近隣住民から、教団に退去を求める動きが出た。オウムに抗議活動をする右翼の街宣車も現れ、かえって住民が不安を募らせることもあった。
住民は自治体側に対策を要求。東葛地区の九市町は二〇〇〇年六月に「東葛地域連絡協議会」を設置し、一致して転入届不受理などの対策を取ることを決めた。
浦安市など協議会に加わらなかった自治体も足並みをそろえ、結局、地区内の十一市町すべてが不受理の方針を打ち出したいきさつがある。
■方針変更に含み
協議会は四月に開いた会合で、不受理方針は変更しないと意見統一したばかりだった。その矢先に出た最高裁の判断に、各自治体からは戸惑いもみられる。
協議会の一員の松戸市の担当者は「方針変更の予定はなく、訴訟になれば、住民の安全確保のため争う。訴訟費用や敗訴の場合の賠償金も市民の理解は得られる」と述べる。その一方で「最高裁の決定は重い。いずれ方針を変えざるを得ないかもしれない」と複雑な立場をのぞかせた。
先月から協議会の会長を務める船橋市には、いくつかの自治体から問い合わせがあった。同市は訴訟で争う姿勢を維持しているが、協議会としての対応には「今月中に話し合いを持ちたい。最終的には各自治体に任せる」と方針変更に含みを持たせた。
■来てほしくない
「最高裁で決まった以上、受け付け拒否は通らないのではないか」。オウム信者の転入で揺れた松戸市稔台に住む大井藤一郎さん(78)は話す。
大井さんは「稔台地区オウム真理教対策委員会」の会長を務め、約三年にわたる住民運動で、教団の食品工場撤退にこぎつけた。「オウムには来てほしくない」というのが本心だ。
その一方で法と住民感情の板挟みになり、一地域での解決の難しさを感じ続けた。大井さんは「矛盾しているようだが、出ていけというだけでは解決しない。教団側と話し合って協定を結ぶなど、工夫が必要ではないか。それができないなら国が徹底的な対策をとるべきだ」と訴える。
奥平康弘東大名誉教授(憲法学)の話 漠然とした不安感だけで権利の制限はできず、自治体の受け付け拒否には根拠がない。憲法によればこの判断しかない。住民側の「してほしくない行為」を具体的にあげ、それに対する教団側の意見を引き出す。自治体には、そうした話し合いの場をもつことが求められる。
受け付け拒否がなおも続けば、最高裁の権威が否定される。自治体は、法の執行者としての立場を自覚し行動しなければならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/cba/20030707/lcl_____cba_____000.shtml