2003年07月05日(土) 00時00分
本県で自生しない植物が八甲田に(東奥日報)
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県内では自生しないとされる高山植物コマクサが、八甲田山系で花を咲かせているのが、四日までに見つかった。板柳町の自営業横沢謙一さん(58)が発見した。自生であれば植物学上貴重な発見だが、県内では二十年以上前に、岩木山で愛好家によって他県のコマクサの種がまかれ、花を咲かせた例があり、専門家は「誰かがまいた種が育った可能性もある」と指摘している。
コマクサはケシ科の多年草で、高山帯の砂れき地に生える。七、八月に長さ二センチほどのピンク色の花を咲かせる。つぼみの形が馬の顔に似ていることが名前の由来。北海道と本州北・中部に分布し、北海道の大雪山や東北地方の岩手山、秋田駒ケ岳の群落が知られているが、本県では自生していないとされてきた。
「何年も八甲田を歩いているが、見掛けたことはなかった。見つけた時は、まさかと思った」と横沢さん。斜面に生えるコマクサの株は複数あり、高さ約十センチ。白っぽい葉の間から茎を伸ばし、それぞれに三、四個の花を付けている。
横沢さんから知らせを受けた環境省十和田自然保護官事務所は、「コマクサが咲いているなど初めて聞いた。八甲田に自生地はないとされているので、何者かによって植え込まれたか、種子をまかれた可能性も否定できない」としている。
県内では一九八〇年に、植物研究グループ「津軽植物の会」が岩木山九合目付近でコマクサを発見。しかし後日、岩木山を高山植物の宝庫にしようとした地元の愛好家が、恣意(しい)的に秋田駒ケ岳で採取した種子をまいていたこと分かり、騒ぎとなった経緯がある。
県内の植物に詳しい青森市立三内中学校の齋藤信夫教頭は「東北大学などが長年調査を行っているが、研究史上は八甲田ではコマクサはないということが常識となっている。今になって突如見つかった原因については、現時点では何とも言えない」と話している。
※写真は八甲田山系で見つかったコマクサ。このほかにも数カ所で花を咲かせているのが見つかった
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2003/0705/nto0705_10.html