2003年07月02日(水) 00時00分
ヒ素の国支援で生活保護 打ち切り可能性(朝日新聞・)
■50代の夫婦 旧日本軍の毒ガスに由来するとみられる井戸水の有機ヒ素化合物による健康被害で失業し、生活保護を受けている神栖町の50代の夫婦が、環境省が打ち出した支援策のため、生活保護の支給が打ち切られる可能性があることが1日分かった。住民は国に対し、支給の継続を訴えている。
■県は支給継続求める 夫婦は環境基準の約450倍の高濃度のヒ素が検出された井戸水を飲んでいた。歩行障害やめまいなどで入退院を繰り返し、2人とも勤めを辞めた。約2年前から月約13万円の生活保護を受けている。
環境省の支援策では、問題の井戸水を飲んだ健康被害者で入院歴がある人には、1人70万円の調査協力金(一時金)などが支払われる。厚生労働省や県などによると、一時金が過去の医療費とみなされると収入扱いになり、生活保護費が削減されたり、打ち切られたりするという。
しかし、過去には水俣病患者の受け取った一時金を全額慰謝料とみなし、収入扱いにしなかった例もある。山本光昭県保健福祉部長は、「調査協力金は実質的に被害者への救済金だ」として、今回も「慰謝料」とみなすよう主張している。
健康被害を受けている夫(52)は「生活保護を受けるようになったのも、旧日本軍の毒ガスが原因だ。環境省の支援があるから生活保護を打ち切るというのはおかしい」と訴えている。
■神栖23人参加 住民説明会 新たな有機化合物検出 環境基準の43倍の比較的高濃度のヒ素が検出された神栖町の住宅地で、新たに17人の住民から有機ヒ素化合物が検出された問題で、県は1日夜、町保健福祉会館で住民説明会を開いた。会場には健康診断を受けた住民23人が訪れた。説明会で県は、健康診断の結果について報告。今後も、十分な健康管理をしていく考えなどを示した。
質疑では、住民が「同じ井戸水を使っていて家族によってヒ素の量などが異なるのはなぜか。がんを引き起こすことにつながらないのか」などと不安をあらわにした。県側は「有機ヒ素化合物については正直言ってわかっていないのが実情」と答えるにとどまった。
また、同地区の住民の池田三富郎さん(57)は近く、新たな住民組織を結成する考えを明らかにした。
(7/2)
http://mytown.asahi.com/ibaraki/news02.asp?kiji=5993
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