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2003年07月02日(水) 20時20分

宅配物爆発 ネット上で無造作売買、浮かぶマニアの危険性 /静岡毎日新聞

 ◇富士市の小谷容疑者宅捜索、長さ50センチの砲弾も
 裾野市のヤマト運輸支店で起きた爆発事件で、ミリタリーショップを経営している富士市伝法の板金工、小谷典久容疑者(32)が1日朝、逮捕された。事件では、拾い集めた不発弾類をネット上で無造作に売買する軍事マニアの危険な一面も浮かんでいる。県内では今年5月、御殿場市で不発弾の爆発事故が起きたばかり。事件を契機に周辺自治体は改めて不発弾回収に取り組んだが、完全回収には至っていないのが実情だ。
 爆発現場となった裾野市今里のヤマト運輸新静岡主管支店には、1日午前2時10分に陸上自衛隊不発物処理隊が現地に到着した。カーキ色の隊服を来た隊員がトラックから降り立つと、現場は緊張感が増した。
 富士市伝法の住宅地にある小谷容疑者方は、同午前10時過ぎから約4時間にわたって家宅捜索が行われた。陸上自衛隊の爆破物処理班4人も参加し、砲弾の安全性を調べる際は、自衛隊員が捜査員を砲弾から遠ざけるなど、現場は終始緊張した雰囲気が漂った。捜査員らは自宅や庭に放置されていた砲弾を一つ一つカメラで撮影したが、中には、長さ約50センチ、直径約10センチの巨大な砲弾や翼のついた砲弾もあった。庭には、かごに入れた砲弾約30発が無造作に転がっていた。
 小谷容疑者は、板金工として働きながら富士市内の定時制高校を卒業。以後、元自衛官の父が約8年前に同市吉原で興した軍用品を売る店を手伝い、商品の買いつけに県外まで出掛けることもあったという。
 父親は当初富士市吉原地区の中心部に店を出していたが、店舗の契約が切れたため、現在の自宅に移り営業を再開。客の出入りはあまりなかったが、宅配便のトラックの出入りが多く、通信販売の注文が多い様子だったといい、小谷容疑者について男性(60)は「おとなしい人で、ほとんど外に出てこなかった。引っ越してきた時は庭が砲弾だらけで驚いたが、まさか本当に爆発するなんて」と驚いていた。【古関俊樹、大楽眞衣子、谷下大輔】
 ◇日本人、不発弾への意識が低すぎる−−軍事評論家・江畑謙介氏
 「爆発しなかった原因が分からず、いつ爆発するかも分からない」。今回の事件を受け、軍事評論家の江畑謙介氏は、不発弾の危険性をそう指摘した。全体の5〜10%の砲弾が不発弾になると言われ、東富士演習場で演習後に行われる不発弾の捜索・処理について「かなりの数を撃つのですべては確認できないし、地中に潜ったものの発見も難しい」と話す。
 ほとんどの国では演習場が厳重に管理され、中に立ち入ることはできないという。江畑氏は「大量に不発弾を所持し、誘爆の恐れを考えなかったのか。日本人は『不発弾は恐い』という意識が低すぎる」と語った。【鈴木英世】
 ◇発射機用いて大きい破壊力−−てき弾
 今回の爆発事件について、陸上自衛隊東部方面総監部(東京都練馬区)は「爆発の規模から見て、火薬量の少ない空砲か演習用のものと考えられる」と話している。
 てき弾は世界各国で多用され、土のうなどを積み上げた軍事拠点に立てこもる兵士や軽装甲車を攻撃する時に使用される。手りゅう弾を投げて届く範囲では、射程が短く敵の攻撃に遭って危険なため、より遠くから目標を攻撃できるよう開発された。グレネードランチャー(てき弾銃)を使って発射し、爆発後に破片を飛び散らすことで破壊力を高めるのは手りゅう弾と同じだが、発射機を使うため数倍の破壊力になるという。【鈴木英世】
 ◇荷物名目は衣類「信用するしか…」−−ヤマト運輸
 荷物を預かったヤマト運輸本社(東京都中央区)でも爆発後、担当の社員を呼び出すなどして対応に追われた。小谷容疑者の荷物が「衣類など」の名目で送られていたことについて、本社広報部は「荷物の中身に関しては、基本的に伝票の記載内容を信用するしかない」と話す。
 表記と明らかに違うものが入っていそうな時は、荷主に確認して調べさせてもらうこともあるが、担当者は「断られれば引き受けるしかない状況だ」と困惑した様子だった。【鈴木梢】
 ◇陸上自衛隊東富士演習場
 富士山ろくの御殿場、裾野、小山2市1町にまたがり、面積は約8800ヘクタールで北海道矢臼別演習場に次いで全国2番目。6割が民公有地、4割が国有地で、地権者は約5000人。国と地元自治体、地権者で5年に1回結ぶ「使用協定」に基づき訓練している。
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 ◇「御殿場」受け対策始めたが、完全回収難しく−−地元自治体
 「また、こんな事故が起きるなんて……」。裾野市の爆発事件で逮捕された小谷典久容疑者が東富士演習場で不発弾を拾い売買していたことを知った地元自治体の関係者は驚きを隠せなかった。今年5月に御殿場市で発生した不発弾の爆発事故を受け、御殿場、裾野両市と小山町は、自衛隊富士学校などと協議し対策に乗り出したところで、今度はマニアとは無縁な若者が被害を受けた。出回っている不発弾の実数などは不明だが、3市町はさらに呼びかけを徹底するという。
 今年5月3日、御殿場市内の民家倉庫で爆発事故が発生し、運転手の男性(43)が死亡した事件も、収集した不発弾が原因だった。自宅から155ミリ砲弾を含む砲弾212発や小銃弾など計506発が見つかり、砲弾73発には火薬が残っていた。
 99年4月には静岡県警交通部の巡査部長(当時44歳)が自宅庭先で集めた不発弾を爆発させる事件も起きたが、5月の事件では、運転手の自宅から発見回収された不発弾の多さが3市町の関係者を驚かせた。
 3市町は5月の連休明けから自宅などにある不発弾を提出するように呼びかけ、その後1月半余りで計26人から20—155ミリの砲弾37発と小銃弾244発が集まったという。このうち20ミリの機関銃弾など2発は火薬が含まれた「危険弾」と分かり、危険のないものを含めてすべて自衛隊に引き取ってもらったという。
 東富士演習場は自衛隊の他の演習場と異なり、民有地が約6割を占め、約5000人が「入会権」を持つという特殊性がある。そのため一般人を完全にシャットアウトするのは困難だ。自衛隊富士学校は今年5月から、権利者であることを示す車用ワッペン配布を始めたが、すべての車両をチェックする態勢はとれず、マニアが不発弾収集に入り込む余地は依然残っているという。
 御殿場市では現在、(1)爆発事故が起きた場合(2)(爆弾が)見つかった場合の住民避難——に備え、行政としての対応をまとめたマニュアルを作成中だ。遠藤豪(すぐる)・演習場渉外課長は「マニアで収集している人が窓口に届け出るとは思えず、どれほど出回っているかも分からない。権利者以外は演習場に立ち入らせない方法を考えるべき時期に来ている」と、予想外の事態に困惑している様子だった。【中村牧生】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030702-00000001-mai-l22