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2003年06月30日(月) 00時00分

道路情報化 実用化をもっと速く 東京新聞

 大型交通事故が頻発している。根深い要因も絡んで、その対策は容易ではないが、ハイテクによる事故防止技術にもっと目を向けてみてはどうか。実現する技術的可能性は十分あるはずだ。

 愛知県内の東名高速道路で二件の大型死亡事故が発生したのに続き、名古屋の都心でスプレー缶を積んだトラックが大規模な路上火災を引き起こした。

 いずれの事故も、過労や信号見落としなど人的原因が絡んでいるとみられる。

 再発防止には人的な事故要因の排除が第一に必要だ。運転手のモラル向上はもちろん、過労を引き起こす運送会社の過酷な勤務条件の排除も急がねばならない。

 だが、デフレと規制緩和で運送業界の競争は激しく、勤務条件の緩和もかけ声だけでは進まない。

 ここで、遠回りのようだが、交通事故の抜本的な防止につながると期待される高度道路交通システム(ITS)の実用化に期待したい。

 ITSが国家プロジェクトに位置づけられたのは一九九五年である。究極の目標は、運転手がハンドルから両手を離しても車が安全に目的地まで運んでくれる自動運転だ。

 ここまでは難しいとしても、当面、▽身近な交通事故防止▽渋滞緩和▽車排ガス削減による地球環境問題改善−などが期待されている。

 ただ、ITS実用化に向けてこれまでの歩みはのろかった。大きな原因の一つに国土交通省、総務省、経済産業省、警察庁の四省庁にまたがる所管官庁の縦割り行政の弊害があったことは否定できない。

 ITSを応用した道路交通情報システム(VICS)に三つの情報伝達方式が混在しているのがその一例だ。ほかにも各省庁が、似た計画を打ち出して、予算を分散させてきた印象が否めない。感知器(センサー)技術の発達で、車の追突や歩行者事故の防止など実用化に近づいている分野も多い。

 ITSの開発が進めば、トラックによる大型交通事故の防止にも役立つ技術が実用化されてくるはずだ。

 来年十月に名古屋でITS世界会議が開かれる。一般来場五万人、全国同時開催のイベント参加五十万人を見込む。

 ここでの実験結果は二〇〇五年の愛知万博にも生かされる。縦割り行政を改め、実現に向けて開発のスピードを速めたい。

 二つの国際イベントはITSの技術開発に弾みをつける絶好の機会だ。日本が事故撲滅への努力を世界に呼びかければ、研究開発で各国の協力も得られるに違いない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030630/col_____sha_____005.shtml

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