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2003年06月30日(月) 00時00分

廃掃法改正 『分けて、拾って、使う』へ 東京新聞

 不法投棄の原状回復を促す産廃特別措置法と、国や自治体の調査権限を強化した改正廃棄物処理法(廃掃法)が、成立した。数歩前進の期待はかかる。が、規制だけでは不法投棄をなくせない。

 「もっと早く止められなかったのか」。八十二万立方メートル、東京ドームの三分の二杯分という青森、岩手県境の産廃不法投棄現場に立つと、ふと漏れてしまう言葉である。

 “産廃富士”も“産廃銀座”も、一朝一夕にでき上がるものではない。県境の不法投棄が「全国最大」と呼ばれるようになるまでに、十年以上の歳月が流れている。日本の産廃行政は、悪質化、巧妙化する違法業者の手口に対し、常に後手に回ってきた。

 しかし、権限のないところに措置はない。住民のため息に重なるように、行政マンの歯ぎしりが聞こえてきたのも事実である。

 産廃特措法とともに今国会で成立した改正廃棄物処理法は、不法投棄の未然防止の観点から、自治体や国の権限強化に踏み切った。

 例えば、野積み業者がごみを「資源」と言い張っても、市町村長や都道府県知事の判断で立ち入り調査が可能になった。緊急時には、国にも調査を認めている。

 また、不法投棄に未遂罪が新設され、罰金も大幅に引き上げられた。

 ただし、権限や罰則の強化だけでは、不法投棄はなくならない。

 県境に不法投棄された廃棄物のうち、約九割が首都圏からの移送である。瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)の産廃不法投棄事件にも見られるように、都会からごみを遠ざけてしまえば、それでことが済むという「掃除」の思想をまず見直すことが必要だ。

 新たな最終処分場建設は、極めて困難な情勢だ。大量消費、大量廃棄を続ける以上、いくら適正処理を唱えても、排出事業者から収運業者、中間処理業者から最終処分業者へと、産廃を“ババ抜き”のように先送りする流れはいつか、不法投棄にたどり着く。産廃は決してなくならない。視界から外れるだけだ。

 だとすれば、千葉県産廃Gメンの石渡正佳さんが唱えるように、「集めて、つぶして、埋め立てる」から「分けて、拾って、使う」社会への構造改革が急務である。

 メーカーに処理責任を課す「拡大生産者責任」の導入は今改正では見送られたが、そのきっかけとして有効だ。これは、産業界だけに負担を強いる制度ではない。処理費用の価格転嫁で、消費者も“痛み”を分かち合う。自らが日々出すごみを正視して、元から減らす契機になる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030630/col_____sha_____006.shtml

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