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2003年06月22日(日) 00時00分

食と安全−サクランボ編(2)山形新聞

 日本一の青果市場、東京都の大田市場に真っ赤に熟した県産サクランボが並んだ。首都圏から集まった小売業者が列を成し、食い入るように見つめる。2、3度うなずき、試食用の果実をほお張る。「さすが山形産だ」—。無登録農薬問題で受けたダメージは、消えつつあるかのように見えた。

 出荷のピークを目前に控えた今月10日、高橋和雄知事、本間正巳県農林水産部長らが同市場を訪れ、県産サクランボをPRした。引き続き市場内のホテルで開かれた懇談会。首都圏の主要青果物卸売会社の社長ら18人を前に、高橋知事ら本県関係者は「山形産は安全で安心」と強調した。

■強まる要求
 「安全は科学で証明できるが、安心は心の問題。信頼回復には時間がかかる」。懇談の場で東京千住青果の武井喜一社長はこう切り出した。

 消費者に対面販売する小売業者、大手スーパーは消費者以上に安全に敏感になっている。卸売業者に対する小売業者の要求は強まる一方。県内のサクランボ農家にとっては厳しい言葉だが、武井社長が商売を通じて感じた率直な印象だ。

 武井社長は「山形の人たちは『万全の検査を行い、問題発生から1年がたった。もう二度と起こしません』で済むかもしれないが、小売業者が失った信頼は大きい。疑心暗鬼になっている。本当の信頼を得るためには2、3年かかるという認識を持つべきだ」と語気を強めた。

 市場関係者の間では、果実の1年はサクランボで始まる—とされているだけに、期待は計り知れない。穏やかな口調に戻った武井社長は「サクランボは山形の特産品であり、今後とも取引を続けていくだろう。一般消費者の視点に立った取り組みを続けてほしい」。高橋知事は「続く限りやっていく」と応じ、強い決意をにじませた。

■戦略を転換
 懇談の中では、「安全は常識」(篠沢忠孝・東京シティ青果社長)「いまだ農薬問題の影響は消えない」(荒川憲治・東京青果取締役部長)と厳しい声が出た半面、「対応が早く、危険と感じている人はもういない」といった前向きな意見も出た。

 大田市場を含む都内中央卸売市場の売り上げは、1991年度を100とした場合、2002年度は76と減少。長引く景気低迷の影響で、し好品的な果実の売り上げがダウンしているからだ。

 安全に対する意識が高まる中、県東京事務所の小林正宣経済担当次長は好機ととらえる。「問題発生後、安全を前面に出した戦略に転換し、一定の理解を得たと実感している。同じ過ちは繰り返さない」。安全・安心を武器に県産果実が販路を拡大するチャンスが訪れているのかもしれない。
(食と安全取材班)

http://www.yamagata-np.co.jp/kiji/20030622/0000018415.html

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