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2003年06月20日(金) 03時30分
大阪3人心中、追いつめたヤミ金融の過酷な取り立て(読売新聞)大阪府八尾市のJR関西線で14日未明に起きた男女3人の心中事件。奈良行き最終電車に身を投じた夫(61)と妻(69)、そして妻の長兄(81)を追い詰めたのは、ヤミ金融による執拗(しつよう)な取り立てだった。 夫は、小さな紙メーカーに勤めていた。手芸が趣味だった妻は、和紙で作った人形を近所に配ったり、作り方を教えたりした。また、大阪府藤井寺市で独り暮らしの長兄宅をたびたび訪れ、身の回りの世話をしていた。長兄には右ひじと両足の関節に障害があった。 そんな妻が、知人から金を借り始め、約5年前には消費者金融も利用するようになった。1997年には、内証で夫の勤め先から50万円を借り、夫の給料が入ると、3万円ずつ返し続けた。社長には「手芸のアルバイト先がつぶれ、仕入れた材料費の返済に困っている」と説明した。 しかし、消費者金融などからの借金は99年には500万円に膨らんでいた。 生活が派手になったわけでもないのに、なぜ、そんなに金が必要だったのか——。知人らは「わからない」と首をかしげるだけだ。 夫は昨年1月、定年退職した。退職金は100万円。その春、妻は近くの食品会社で、弁当を盛り付けるパートに出るようになった。夫もその年の秋、古紙卸売会社で時給750円のアルバイトを始めた。「生活に困っているので」と役員に懇願したという。 ◇ 「あんたも保証人だ」 心中の数日前、夫婦と同じ団地に住む主婦に突然、電話がかかった。妻が金を借りた東京のヤミ金融業者は、電話で「お前に金がないなら近所の者に払わせる」とドスを利かせ、そのまま別の電話で隣人らにもかけていた。 「何で、よそのうちにかけるの。あれだけ払ったじゃないですか」。妻は主婦宅に駆け込み、受話器をつかんで抗議した。目には涙をためていた。 「殺すぞ」。何度もどなる男の声。「殺せばいいわ」。妻は悲痛な声で言い返した。 この業者は4月、どこで調べたのか、夫婦の家に「融資できます」と“営業”の電話をかけてきた。借りた額は3万円だったが、実際は「利息先取り」で1万5000円しか渡されなかった。一方で、妻は業者に言われるまま、1か月で10万円を支払った。年利換算で7000%を超す暴利だ。 妻は約20のヤミ金融業者から計50数万円を借り、200万円を超す金利を払っていた。中でも、東京の業者の取り立ては激しく、電話は夫の元職場やアルバイト先、妻の長兄の自宅などに及び、妻はパートを辞めた。 ◇ 妻は先月、八尾署を訪ねて相談した。署員は最初の相談時、「これ以上、払う必要はない」と助言した。長兄に付き添われて2度目の相談に訪れた際、署員は妻の目の前で業者に電話した。業者は「完済されています。勘違いでしょう」と答えた。署員は「相談者が言っているようなことを繰り返すのであれば、犯罪になるぞ」と警告した。 だが、業者の取り立てはむしろエスカレートした。 八尾署での相談後、妻はヤミ金融の手口を説明するため府警本部に3度、足を運んでいた。心中する3日前、最後に同本部を訪れた妻は、担当者に笑顔を見せた。「あんなおいしいもん、久しぶりに食べたわ」 前にごちそうした昼食の刺し身定食のことだった。 心中の翌15日。大阪市平野区の斎場で、3人はひっそりと荼毘(だび)に付された。 〈もっと生きていたいけど、もうこれ以上、ご迷惑はおかけできません。ごめんなさい〉 〈悪徳業者に負けてしまいまして、死を決意致しました。あんなやつらのために死ぬのはくやしいですが……。どうか、どうか、勝手な私たちをお許し下さいませ〉 妻の遺書にはそうあった。 |