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2003年06月12日(木) 00時00分

りそな公的資金注入で『金・銀・監』蜜月関係 会計士が当局出向 “ご意向”を連絡  東京新聞

 金融庁はりそなの監査に圧力をかけたのか。りそなへの公的資金注入をめぐる衆院財務金融委員会の参考人質疑では、一番知りたい疑問が解けなかった。そこで問題の主役たち、金融庁、銀行、監査法人の関係をあらためて探ると、“金銀監”による三位一体型のなれあい所帯が浮かびあがってきた。 (市川千晴、藤原正樹)

 まず政財官の癒着に似た“プチ・トライアングル”の関係を整理してみる。

 三角形の頂点に“君臨”する金融庁は、銀行と監査法人の双方を監督する役目だ。四大メガバンク(巨大銀行)グループはその下で、「暗黙の了解」(五十代の公認会計士A氏)のもとに、四大監査法人とそれぞれ監査契約を結んでいる。みずほは新日本監査法人、三菱東京は監査法人トーマツ、UFJは中央青山監査法人など、三井住友は朝日監査法人といった具合だ。

 次に金融庁と監査法人との“お付き合い度”を測ってみよう。大手監査法人に勤める三十代のB氏が証言する。

 ■倒産影響恐れ 監査法人統制

 「特に破たん処理をするとき、税務処理では違法ギリギリのことをしなくてはいけないことがよくあり、金融庁に判断を仰ぐ。金融庁はその企業がつぶれた場合の影響力を恐れているから、監査法人をコントロールしたがる」

 このとき金融庁側との連絡係は、かつて同庁に出向したことのある公認会計士たちだ。

 実際、金融庁は基本的に期間二年で公認会計士の出向を受け入れている。現在でも企業開示参事官室には、トーマツ、朝日の両監査法人からそれぞれ一人が出向中だ。

 同庁企業開示参事官の羽藤秀雄氏は「金融庁は、所属する監査法人で出向してくる会計士を選んでいるわけではない。会計士としての資質に着目し、政策の企画・立案に携わることを希望する人材を採用している」と説明する。

 別の大手監査法人に勤める三十代の会計士、C氏が、連絡係の役割を詳しく解説した。

 ■『粉飾決算』要求に逆らえず

 「銀行監査担当で優秀な会計士は二十代後半で二、三年間金融庁に出向する。ここでは最新の会計基準を法人に報告したり、当局の“ご意向”を伝えたりする。監査法人内で問題の起きそうな監査情報や業界情報も報告する。出向を終えた時、一部の会計士は当局の言うことを聞く“犬”のようにさえなっている。当局が政治的な意図を持って粉飾決算をしろと言ってきたら、会計士は『おかしい』と言えないのが現実だ」

 一方、監査法人と銀行の関係はどうだろうか。

 前出のA氏は、「銀行の監査料はそれほど高くない。しかし、その銀行をメーンバンクにしている会社やグループ企業がくっついてくるから、ビジネスの上でオイシイ客といえるね」と明かす。

 さらに「銀行監査は他の会社とまったく違う会計なので、担当の会計士はどうしても鼻持ちならないエリート意識を持つようになる。そのくせイエスマンばかりで、監査に異論をはさもうものなら、チームを外されてしまう」という。

■監査料少額も銀行は“上客”

 C氏もこれに同調し、銀行監査の実体を明かす。

 「銀行からの接待は少なくとも年二回、決算期と中間決算期にある。海外や地方出張に行けば、五時前から宴席が用意してある。銀行からあからさまに手心を加えるよう要請されることはないが、ここまで接待されると心情的に甘い査定になってしまうよ。銀行の同一グループ会社の優待券をもらうから、十五万円のブランドスーツも二万円で買えるし」

 C氏の“独白”は続く。「こういった接待攻勢は外資系企業を担当するとほとんどない。日本企業では厳しい監査はタブーだ。銀行はつぶれないことになっていたし、誰も責任を問われないから、プレッシャーはゼロだ。銀行と仲良くし、論理的に粉飾気味の決算する方法をアドバイスしてきた。だがこれは銀行に限った話だ。つぶれそうなゼネコンを担当している会計士は、粉飾決算したら訴訟の対象になるという危機感から厳しい監査をしていた」

 りそな問題では、金融庁が監査法人の監査に介入した疑いがもたれている。十一日、国会で開かれた参考人招致では、銀行、監査法人ともにこれを否定した。専門家はこうした状況をどうみているのだろうか。

 明治大学の山本昌弘教授(会計学)は、三者の特殊性について解説する。

 ■銀行の監査は中立にできぬ

 「現行制度では、銀行の監査は中立にできない。金融庁は強い統制力を使って銀行行政を優先させてきているから、どうしても銀行にとって都合の良い監査をさせられてしまう。本来、会計は企業の物差しだ。仮に監査の結果、ある企業が債務超過になったとしても、物差しに責任はなく、測る対象そのものに問題がある」

 日米公認会計士で愛知工業大の岡崎一浩教授(会計学)も手厳しい。

 ■監査めぐる相談は違法

 「会計士は裁判官と同じで、公正で独立した存在だ。監査をめぐって金融庁に相談したとすれば、その行為は公認会計士法の監査基準二条(独立性を疑われることをしてはいけない)に違反している」

 早稲田大学の大村敬一教授(金融学)も同意見だ。

 「銀行と監査法人の癒着は昔から指摘されてきたが金融庁が監査を指示したことが証明されれば問題だ。根本的に金融行政がおかしい。昔の護送船団方式に終わりを告げたはずなのに」

 慶応義塾大学の金子勝教授(財政学)も、金融庁に批判的だ。

 「監査法人は金融庁の指示を曲げられない。りそな銀行に対して再検査もせずに公的資金を注入するのは、金融庁が過去の失敗を追及されたくないからだ。破たんした旧長銀、旧日債銀などはすべて債務超過だった。今、りそな銀行に対して再査定できないのは、一九九九年にりそなグループの旧大和、旧あさひ、旧近畿大阪の三行に公的資金を注入したものが失敗したと明らかに分かるはずなので、それを恐れているのでは」

 評論家の佐高信氏は「今まで眠っていた審判(監査法人)が急に出てきて、『アウト』を宣告しても、国民は素直に拍手を送れないはずだ。監査法人は“資格を持った総会屋”のようなもので、やくざをやりながら十手を振りかざすという矛盾した態度で甘い汁を吸ってきたんだから」と切り捨てる。

 「監査法人の“眠り薬”となった金銭は銀行から出ており、お互いに共犯者だ。旧大蔵省時代から保護行政を行ってきた金融庁は責任逃れのために今ごろアウトと大騒ぎしている。りそなに投入される二兆円は、癒着した金融庁・銀行・監査法人の責任逃れのために投入されるようなものだ。三者が自分自身にアウトを出さない限り、国民に対する説得力はゼロだ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030612/mng_____tokuho__000.shtml

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