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2003年06月04日(水) 20時50分

[わははのは]/70 今年も私だけ…=見延典子 /広島毎日新聞

 新学期になって、娘の通う中学校からクラスの連絡網をつくって配布するので、自宅の電話番号を記載することに可か否かを回答してほしいというプリントが回ってきた。
 私は三年ほど前、紳士録サギにあい、多額の現金を請求されるという経験をして以来(幸い未遂に終わったが)、見ず知らずの人からの電話に対して人並み以上に警戒心を抱くようになった。
 そのためクラスの連絡網についても、昨年度同様、本年度も記載しないでほしい旨を書いて提出した。
 先日、そのクラスの連絡網が届いた。見ると、電話番号の記載を拒否したのは私の家庭だけで、残りの三十数名の皆さんはすべて記載している。実は昨年度も記載を断ったのは私の家庭だけで、おそらく連絡網を見た多くの人々は「なんと猜疑心(さいぎしん)の強い保護者なのか」と思っているに違いない。
 実は私がクラスの連絡網を警戒しているのにはもう一つ理由がある。
 十年ほど前のこと。放課後、公園で遊んでいた当時小学生だった息子が、「クラスの連絡網、どこにある?」といいながら帰ってきた。「何に使うの」と訊(き)くと、「知らないおじさんから貸してほしいといわれたんだ」という。外に出てみると、一台の乗用車が止まっていて、私を見るとあわてたように発進させ、どこかへ行ってしまった。それから間もなく小学校からも、同様の手口でクラスの連絡網を集めている業者と思われる人々がいるので、決して貸し出したりしないようにというプリントが回ってきた。
 直接、犯罪に結びつく例はなかったようだが、教材のセールスや家庭教師の勧誘などの電話がひっきりなしにかかるたびに、いやな思いを味わっていた。
 ところが昨年、連絡網への記載をやめた途端、その種の電話がピタリと止んだ。偶然といえば偶然かもしれない。しかしながら気味が悪いほど電話がかからなくなった現実をどのように受けとめればいいのか。
 今の時代、プライバシーを知ろうとすればさまざまな手段があるといわれる。電話番号を知ることくらい、いとも簡単であり、だから各種名簿に電話番号を載せない程度では何の役にも立たないという人もいるだろう。だがささやかでも確たる意志を示すことで、見えてくる現実もあるのだ。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030604-00000002-mai-l34

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