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2003年05月16日(金) 14時41分

長者番付公示に見直し論…犯罪標的に、常連嘆く読売新聞

 16日公示された高額納税者番付。このリストを悪用したとみられる犯罪は後を絶たず、常連のある会社役員は「公示されていいことは一つもない」と訴える。

 政府の税制調査会も、プライバシー保護の観点から廃止も含めた見直しを検討しているが、一方で、高額納税者への顕彰や、納税の不正に対する一般からの情報提供を促す「第三者によるチェック」という本来の目的を強調する声も根強い。

 「娘の誘拐未遂があったのは、初めて全国の上位100人に登場した年のことでした」

 10年ほど前からランクインしている会社役員は重い口を開いた。

 当時、小学校低学年だった長女は、学校から歩いて帰る途中、いきなり男に乗用車へ連れ込まれそうになった。大声を上げたため、通りがかりの人が声をかけ、男はそのまま逃走した。

 役員は当時、引っ越してきて2年余りしかたっていなかったが、税務署での公示では自宅住所が公表されていた。男は長女を連れ去ろうとした際に名前を確認したといい、地元警察の捜査員も「高額納税者として狙われたんでしょう」と話した。結局、犯人は捕まらなかった。

 役員は、それから1年間毎朝夕、車で長女を送り迎えした。その後も運転手を雇い、卒業するまで1日も欠かさず送迎を続けた。政治団体を名乗る右翼などから寄付を求める電話も頻繁にあり、「誰かが犠牲になるまで公示は続くのか」と沈痛な表情で話す。

 高額納税者を狙ったとみられる事件は、各地で相次いでいる。昨年5月に警視庁が摘発した恐喝事件は、富裕層を狙い、「浮気の事実が確認された」という手紙を送りつけ現金を脅し取るという手口だったが、容疑者らは高額納税者などをターゲットに選定していた。

 しかし、公示制度があることで、脱税や無申告、申告漏れをチェックするという機能は依然として有効だ。一昨年、外資系企業の元日本代表が、親会社から与えられたストックオプション(自社株購入権)で得た約100億円の申告漏れを国税当局から指摘されたが、この調査は、「申告せず20億円もの資金を海外に置いている」という内部告発がきっかけだった。

 また、公示制度には、高額納税者への顕彰という意味合いもあり、上位にランクインしたある経営者は「公示されることは、事業の成長の結果。楽しみにしているし、励みにもなる」とコメント。他のランク者の中にも「自分より上位の人がいることで、さらに上を目指そうと思える」と話す人も少なくない。

 ◆ストックオプション=企業が社員らに対し、あらかじめ設定した価格で会社から自社株を購入できる権利を与える報酬制度。外資系企業の社員が、売却益を海外口座に預けたままだと、国税当局には実態の把握が難しく、調査の壁になっている。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030516-00000007-yom-soci

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