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2003年05月13日(火) 22時26分

5月14日付・読売社説(2)読売新聞

 [生保利下げ]「破綻すれば損はもっと増える」

 保険金が減らされることは避けたい。しかし、保険会社が破綻(はたん)してしまえば、受取額はさらに減らされかねない。

 その問題に、政府がようやく結論を出した。

 金融庁は、生命保険会社が契約者に約束した運用利回り(予定利率)の引き下げを、破綻前にも認める保険業法改正案を今国会に提出する方針を固め、自民党に要綱を示した。

 株安で生保の経営が一段と悪化していることを考え、早期成立を図る必要がある。契約者負担を実質的に軽くする道を早く開かねばならない。

 生保各社は、バブル期に高い予定利率で契約を獲得した。

 しかし、金利低下で運用実績が予定利率に追いつかない逆ざやが拡大し、経営基盤を揺るがしている。

 今の保険業法では、生保が破綻しない限り利率の引き下げは認められない。

 金融審議会は一昨年、選択肢を広げるために破綻前の引き下げを認める報告を出した。金融庁も法律改正の準備に着手したが、具体化が大幅に遅れていた。

 生保救済のために契約者が不利益を強いられる、との疑念が強いからだ。

 だが、引き下げに伴う損失は、通常、破綻による損失よりも小さい。

 契約の時には予想できなかったような超低金利が続いている。経済情勢が大きく変わり、契約どおり履行することが必ずしも妥当といえない状況になった。

 銀行と生保が資本を持ち合い、危機の連鎖が広がりかねない状況では、安全網の整備は急務だ。

 大切なのは、引き下げの際に、どこまで契約者保護ができるかである。

 改正要綱によると、契約者の代表による総代会で、出席者が持つ議決権の四分の三以上の賛成が得られない場合は、引き下げが認められない。

 引き下げ対象契約の10%を超える異議申し立てがあった場合も同じだ。一応の歯止めは掛かったと見ていい。

 これだけではまだ不十分だ。引き下げた場合の損得がはっきり分かるよう、生保業界は契約者に具体例を示すべきである。各社の経営情報をより詳しく開示することも不可欠だ。

 契約者に負担を強いる以上、経営者の退陣や生保への銀行出資の削減なども法案に明記すべきだとの意見も強い。

 だが、引き下げはあくまでも破綻の前段階の手続きだ。当事者同士の協議に任せるべきだろう。

 金融庁には、高い予定利率を認めてきた責任がある。法案成立には全力で当たらなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20030513ig91.htm

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