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2003年03月30日(日) 06時04分

がん切除した患者にイレッサ投与 治験続け3人が肺炎に朝日新聞

 抗がん剤イレッサの販売元のアストラゼネカ社が、手術で肺がん切除に成功した患者を対象にした臨床試験(治験)で、3人の間質性肺炎患者を出していたことがわかった。副作用多発を警告する緊急安全性情報を出した以降も続けられ、がんを切除したいわば健常人に対して重い副作用を招く可能性のある抗がん剤を投与したことになる。専門家の間では「手術で治った可能性のある患者に、重い副作用の危険を負わせるのは賛成できない」との声が上がっている。

 イレッサは昨年7月に承認されたが、使えるのは治療の手立てのない末期肺がん患者のみ。使う範囲を広げるには、新たな治験で有効性や安全性を証明する必要がある。

 ア社は、手術でがんの摘出を終えた患者の再発防止に効果があるかどうかを証明するため、肺がんを完全に切除できた患者をイレッサを投与するグループと、偽薬のグループに分けて比較する治験を計画。イレッサの発売から1カ月余りたった8月20日に始まった。

 しかし、発売直後から間質性肺炎による副作用死が相次いだ。10月15日に医師向けに警告する緊急安全性情報を出してから8日後の10月23日、この治験への新たな患者の参加を中止したが、治験は継続された。この時点での治験参加者は38人だった。

 治験を継続したため、イレッサ服用を続けた患者のうち、70代の男性2人、60代の男性1人が11月から今年1月にかけて間質性肺炎を発症した。いずれも死亡はしなかったが、間質性肺炎は重篤で後遺症の心配もあった。

 昨年末には、厚労省は副作用死を防ぐために投与開始から4週間は原則入院とする対策を示した。治験を続けるためには、手術を終えて退院できる患者に、さらに入院を強いることになり、新たな参加者を求めることは困難となった。現在、中止に向けて手続きを進めている。

 ア社は「手術を受けた肺がん患者でも、40〜50%は5年以内に再発して死亡している。肺がん手術後に使える標準的な薬がなく、必要な治験だった。参加者には新たに同意を取り直しており、適正だった」としている。

 一方、肺がんの場合、がんが発見されて手術で摘出できるのは、むしろ幸運なケースとされる。イレッサの副作用のメカニズムが解明されていない段階で、せっかく助かった患者の治験を継続することには批判的な専門家が少なくない。

 日本肺癌(がん)学会理事の有吉寛・県立愛知病院長は「副作用が問題になってからも、続けなければいけない治験だろうか。安全性がはっきりするまではすべきではない」と話している。(03/30 06:04)

http://www.asahi.com/national/update/0330/003.html

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