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2003年03月15日(土) 00時00分
社説=予防接種判決 副作用の監視を強めよ(信濃毎日新聞)製造元だけでなく、国にも損害賠償を命じた予防接種禍訴訟の大阪地裁判決は、薬剤の承認後も国に重大な責任があることをあらためて明確にした。副作用の監視強化を促す内容だ。判決の指摘を生かし、再発防止に手を尽くすよう求める。 一九八八年に旧厚生省が製造を承認した新三種混合(MMR)ワクチン接種の問題である。副作用により約千八百人が無菌性髄膜炎を発症した。九三年に接種を中止している。 死亡したり、重い障害が残った三人の子どもの家族らが訴えていた。二人について、国と製造元に計一億五千万円余りの支払いを命じた。 国への届け出と違う方法で製造したワクチンと副作用の因果関係を、判決は認めている。製造元に製造方法を守らせるよう監督する義務を、国が怠っていたと判断した。 製造方法を変えていることを知らなかったというのでは、薬事行政が信用できなくなる。薬を承認するだけでなく、製造を監督する責任の重さをはっきりさせた意味は重い。 昨年七月、世界に先駆けて承認されたばかりの肺がん新薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)でも、副作用で多くの死者が出ている。厚生労働省に対して症例を報告する際、輸入販売元が定められた期限を守っていなかった可能性が浮上している。 事前に届けた通りに作られているか、副作用の状況はどうかなど、より詳細に点検する手だてを講じなくてはならない。そのためにも、MMRワクチンの承認後、どう対応していたかを検証する必要がある。 副作用を的確に把握できなかったり、措置の遅れにより被害を広げた薬害エイズなどと共通していることに、目を向けなければいけない。 MMRワクチンも予期した以上の副作用が生じた。判決は九三年以前に接種を中止しなかったのは「行政の裁量範囲」としたものの、一時見合わせが望ましかったとも述べた。 かつて罰則規定も伴う「義務」だった予防接種は九四年の法改正で、いまは「任意」だ。個人の意思を尊重するという理由ではある。 被害の恐れに関する判断を保護者にゆだねているかのようにも受け取れる。国が副作用の発生を監視し、適切な対応をしているという信頼が、接種に欠かせない前提だ。 医薬品が安全かどうか、細心の注意を重ねていくことが、国民の健康を守る行政の責務である。より綿密な副作用調査の実施など、対策を練り直す機会にしなくてはならない。
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