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2002年05月11日(土) 00時00分

大人気の「マイナスイオン」、実は有害?実はナゾの物質、効果論争もZAKZAK

 「大自然の空気」のうたい文句で超人気のマイナスイオン。健康志向に乗って大ブームとなり、エアコンなどの新製品も大ヒット中。だが、その「正体」に疑問の声がある。この単語、実は科学用語にない和製英語で、何を指すのか、ナゾの物質なのだ。家電製品のイオン発生器からは、体に悪い物質が出ている可能性まで指摘され…。効果論争が起きそうだ。

 「キャッチコピーの才能のある人が言い出したんですかねえ」

 東京大学生産技術研究所の安井至教授はマイナスイオンについて、こう苦笑する。

 「健康にいい」とマイナスイオンが注目されたのは約3年前。イオンが出るという備長炭やトルマリンを使った製品が売れ、大手スーパーがイオン加工を施したリクルートスーツを出すなど大企業も含め、300以上の関連商品が登場した。

 家電では大手メーカーも次々に参入し、空気清浄機、エアコン、ドライヤー、冷蔵庫…などを商品化した。

 特にエアコンは3年前、東芝がマイナスイオンが出る「大清快」を発売。業界3位だった同社のエアコンシェアを首位に迫らせるほどの人気商品となり、他社も追随。今夏は、もはやイオンをアピールしない新製品を探すのが困難なほど。

 松下電工が発売したドライヤーも「髪をしっとりさせる」と若い女性を中心に大ヒットし、40万台が売れた。

 家電のパンフレットをのぞくと、マイナスイオンについて「大自然にたくさんある」「お部屋にうるおいと安らぎを」「空気をきれいに」と“能書き”が並ぶ。

 前出の安井教授は「教科書で習う陰イオンとは全く違うもの。こんなこと言っているのは日本だけ」と明かす。

 その実態は「よくわからないけど、細かい水滴に、陰イオンになりやすい化学種がくっついたものでは」という。

 そのうえ、「化学種にはいろいろなものがあり、硝酸イオン、硫酸イオンなどもあるはず」で、「有害なものもあるのでは…」と危惧(きぐ)する。

 家電のイオン発生メカニズムの多くは放電によるが、オゾンが出ている可能性が高いという。

 「オゾンは活性酸素そのもので、労働環境での基準も定められている有害物質」(安井教授)

 安井教授は実際にイオン発生型の加湿器を試用するが、オゾン臭がするという。商品によっては「においがする」の注意書きがあったり、「有害なオゾンを発しない」とするものもある。

 もっとも、オゾンには脱臭・殺菌作用があり、だから有害なのだが、害虫退治など「空気をきれいにする」のは確か。

 同じ原理の機械は工場などで静電気防止装置として使われ、ドライヤーはこの効果とみられるが、いずれにせよ「大自然」には程遠い。

 それにしても、この事実、大手メーカーが知らないはずはない。

 「マイナスイオンの髪や肌に対する保湿・除電効果に着目し、検証のうえ訴求している。癒し効果、健康促進効果については確認できておらず、訴求もしていません」とは松下電工。オゾン発生には「自然界に存在するほどの微量」という。

 東芝はマイナスイオンの疲労軽減効果など実証データを保有し、「自然の気持ちよさや害虫を寄せ付けないことなどを訴求している」という。

 「マイナスイオン自体には静電気防止効果や加湿効果は認められないと認識している」。同じマイナスイオンでも本当にいろいろあるようだ。

 大阪大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの天羽優子講師(中核的研究機関研究員)は、大手空調メーカーのエンジニアからイオン発生器の真偽について相談を受けた経験を明かす。

 天羽氏が「おかしな話」と結論づけると、このメーカーは「眉唾(まゆつば)でも客から求められれば、商品につけざるを得ない」と悩んでいたという。

 最後に、安井教授は「日本は科学的後進国という証明」と呆(あき)れているのだが…。

ZAKZAK 2002/05/11

http://www.zakzak.co.jp/top/t-2002_05/3t2002051101.html

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