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2001年11月05日(月) 03時05分

詐欺主犯に16億追徴課税読売新聞

 資金繰りに苦しむ全国の中小企業経営者ら約5000人が、虚偽の融資話で総額約68億円分の小切手や手形をだまし取られた事件で、東京国税局は、うち約28億円分について、主犯の小林誠司被告(36)(東京都江東区)の所得隠しと認定、重加算税を含めて約16億円を追徴課税した。

 同被告は仲間9人とともに今年1月、詐欺容疑で京都府警に逮捕され、同府警が同国税局に課税通報した。立件額は計約1800万円だったが、不況を逆手に取った悪質な犯罪に対し、国税当局が税務面から厳しく追及した形だ。

 小林被告の弁護士によると、同被告はすでに修正申告に応じているという。

 京都府警などの調べによると、小林被告らのグループは、金融業者を名乗って、全国の中小企業の経営者に「不況対策、緊急融資」と書かれたダイレクトメールなどを送り、「無担保で希望する額を融資する」と勧誘。経営者が申し込むと、「事前に取引実績を作って信頼関係を築く必要がある」などと言って、額面百数十万から数十万円の小切手2通を郵送させていた。

 このうち1通は現金化し、経営者の口座に返金することで信頼させる一方、もう1通は「保証金」として預かり、融資を実行しないまま連絡を絶っていた。

 京都府警は昨年11月、都内の事務所などを捜索、今年1月、小林被告ら計10人を詐欺容疑で逮捕した。

 同グループは、常時約60人を社員などとして雇い、「平成経済企画」「コンセック」など数十の社名を使い分けて、98年春から逮捕されるまでの2年数か月の間に、中小企業主らから総額約68億円分の小切手や手形を集めていた。

 小林被告らの居住地や活動拠点が東京だったことから、課税通報を受けた東京国税局では、68億円のうち、現金化のうえ返金した分や事務所家賃などの経費を除いた28億円を利益と認定。いったん小林被告の手に渡った後、仲間に分けられていたとして、全額を小林被告の所得とした。さらに、同被告が全く申告していないうえ、200を超える銀行口座に分散して預金するなどしていたことから、悪質な所得隠しにあたると判断した。

 小林被告名義の銀行口座には少なくとも3億円の預金があったほか、これまで計3億数千万円分の不動産を購入しており、同国税局では今年7月、千代田区内のビルなどを差し押さえている。

 小林被告は京都府内の建設業者ら延べ12人から、計37通1875万円分の小切手をだまし取った詐欺罪に問われ、8月2日に京都地裁で懲役1年8月の実刑判決を受けたが、現在、控訴している。

 ◆「貸し渋り食い物」に税務で追及◆

 不況が長引く中、銀行の「貸し渋り」で融資を受けられない中小企業主らを食い物にする詐欺や出資法違反事件が相次いでいる。

 信用保証協会の保証があれば無担保で融資が受けられる「中小企業金融安定化特別保証制度」をめぐっては、衆院議員の元秘書らが、保証協会への口利きで法外な仲介手数料を得ていたとして昨年11月、東京地検特捜部に出資法(仲介手数料の制限)違反容疑で逮捕された。また、虚偽の申請書を保証協会に提出し、金融機関から融資金をだまし取る事件も続発、99年5月には1500万円の融資を引き出した暴力団組長らが警視庁に逮捕された。

 また、新規事業のために社員を雇った際に支給される「中小企業雇用創出人材確保助成金」を巡っても、助成金約630万円をだまし取った経営コンサルタントが今年2月、大阪府警に逮捕されている。

 こうしたケースを、刑事事件の立件に併せ、税務面から追及した例は少ない。京都府警では「被害が全国に広がり、全部を立件するのは物理的に難しかったことから、国税当局との連携に踏み切った」としている。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20011105-00000001-yom-soci

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