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2001年09月18日(火) 00時00分

「マルチ商法」業者の「共済」販売 公正な運営、安全性は? 消費生活センター 相談件数が増加 ファクス購入や 入会金など必要 保険に比べ法規制緩く 消費者自身が健全性に注意を 中日新聞

 商品やサービスを買った人がその販売組織の会員になって知人などに購入や組織加入を勧める−という、いわゆる「マルチ商法」の業者が、保険と同様の機能がある「共済」を扱う例が出始め、各地の消費生活センターには勧誘された人からの相談が増えている。掛け金を集めて将来の共済金の支払いに備えるのだから、共済の販売組織には公正な運営が強く求められる。マルチ商法の業者による共済の販売は問題はないのだろうか。 (白井 康彦)

ファクス購入や 入会金など必要

 自営業男性Aさんのもとに今年二月、東京に本社があるB社の代理店が、ファクスの購入や共済加入の勧誘に訪れた。大手生命保険会社の営業職員の女性が、Aさんのことを代理店に紹介したという。

 「一緒に仲間を広げて頑張っていこう」。熱心に誘われたが、Aさんは数日後に断った。

 B社は会員にファクスを販売し、ファクスを使った情報サービスを展開。共済は一九九八年から取り扱っている。代理店になった人が代理店を勧誘していく営業手法については「連鎖販売取引に該当」と説明。代理店になる条件として、ファクスの購入や入会金の支払いのほかに、自分自身が共済に加入申し込みすることも必要としている。

 扱っているのは、がんなどの成人病にかかったときに共済金が支払われるものや、交通事故で死亡したり入院したりしたときなどに共済金が出るものなど。契約件数は現在、約十一万件という。

 B社は「会員の中から『不慮の事故に備えた保障を考えてほしい』という声があり共済を始めた。海外の優良な保険会社に再共済をかけているので共済金の支払いは安心。加入者には決算をきちんと公開している」と強調している。再共済は、共済の運営事業者が共済金の支払いに備えて、別の保険や共済の運営事業者の保険に入ることだ。

  ×  ×

 B社と同じように代理店になった人が代理店を勧誘する手法を取っているC社(本社東京)は、九九年に共済の販売を始めた。パンフレットでは、こうしたシステムを「二十一世紀の流通形態の主役といわれる」などと紹介している。

 扱っているのは、交通事故の加害・被害者になったときの出費に備える共済や、生命保険の定期保険と同様の十年定期の生命共済など。契約件数は約十三万件という。

 C社の役員は「保険業界を革新していきたい」と強調。「日本の生命保険は営業職員が多いといったことから保険料が高くなっている。それに対して、うちのやり方だと、販売業務をアウトソーシング(外部に任せること)できることなどにより、共済の掛け金を安くできる」と説明する。

 宮崎市にも、B社やC社と同様な営業手法で共済を販売している組織の本部がある。この方式での共済の販売は正式には昨年から始め、現在までの共済加入者は約三千人という。実質的な経営者は「共済の理念を広めるには、この営業方法が適している」と強調する。

 国民生活センター(東京)には、同センターや各地の消費生活センターに寄せられた相談に関するデータベースがある。

 いわゆるマルチ商法の業者による共済販売についての相談がどの程度あるか調べるため、「マルチ」「共済」という二つのキーワードで、担当者にデータベースを検索してもらった。

 出てきた相談件数は、九八年度四十六件、九九年度九五件、二〇〇〇年度百四十七件と、ここ数年、大幅に増えている。相談は「勧誘されているが、どうしたらいいか」といった内容が目立つという。

保険に比べ法規制緩く消費者自身が健全性に注意を

●マルチ商法

 いわゆるマルチ商法の業者による共済の販売を法的に整理してみよう。

 この商法は、ピラミッド形の販売員組織による無店舗販売を指す。消費者が販売員にもなり、勧誘の実績に応じて利益を得ていく仕組みだ。

 マルチ商法という言葉は、法律用語ではない。アメリカで生まれた「マルチレベルマーケティング」という営業手法が語源。近年は「ネットワークビジネス」という言葉もよく使われる。

 問題点としては、勧誘に応じて組織に入る人が高価で不必要な商品を買わされてしまうことがあったり、友人や知人を無理に勧誘して人間関係が壊れたりするケースがあることが挙げられる。国民生活センターや各地の消費生活センターへの相談件数も二〇〇〇年度で一万五千七百十八件と非常に多い。

 このため、日本では、いわゆるマルチ商法が特定商取引法の中で「連鎖販売取引」として法的に位置づけされ、勧誘や広告などについて厳しく規制されている。逆に言えば、同法の規定を守る限りマルチ商法は適法であるといえる。

 一方、共済に関しては法的な規制は緩い。

 生命保険会社や損害保険会社は保険業法によって規制を受けている。しかし、法律に基づいて共済事業をしているのは、農協の共済や全労済の共済、県民共済など少数にすぎず、事業者の数からみれば根拠法令に基づかない共済の方が多い。

 結局、特定商取引法の連鎖販売取引の規定を守るいわゆるマルチ商法の業者が、共済を始めても法的な問題はないということになる。

●オレンジ共済

 しかし、一九九六年に発覚したオレンジ共済事件を思い起こす人は多いはずだ。友部達夫・元参議院議員=詐欺罪で有罪が確定=がつくったオレンジ共済組合は、共済の掛け金を集めただけでなく、高利の預金商品という名目で巨額の資金を消費者からだまし取った。

 業者の共済事業の運営次第で将来、問題が起きる懸念はあるわけだ。オレンジ共済は根拠法令に基づかない共済だった。こうした共済の方が行政によるチェックが入りにくい点に注意が必要だ。

 もっとも、保険業法で規制されている保険会社の経営破たんが相次ぎ、保険加入者が保険金削減などの痛手をこうむったことも記憶に新しい。規制を受けていないからどの業者も信用できないとか、規制を受けているから安心だといった短絡的な因果関係はないので、消費者は保険や共済の運営機関の健全性に十分に注意することが必要だ。

●悪徳業者は?

 悪徳商法の被害者救済問題に取り組む関係者は「共済事業がうまくいきそうということになったら、さまざまな業者が次々と共済に進出する可能性がある。そうなれば、共済金の不払いなどで消費者に被害を及ぼす悪徳業者が現れかねない」と指摘している。

http://www.chunichi.co.jp/00/kur/20010918/ftu_____kur_____000.shtml

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