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2001年05月21日(月) 00時00分
マイラインの架空代理店契約で詐欺経営者は行方不明被害は数億円に(毎日新聞)「大手電話会社のマイライン契約の代理店になれば金がもうかる」と虚偽の話をもちかけ、保証金名目で金を集めた福井市の会社経営の30歳代の男が行方不明になっていることが21日、分かった。福井県警は詐欺容疑で逮捕状を取った。被害総額は数億円とみられ、男が業者らを集め勧誘した会合には、電話会社の社員も出席していたという。 関係者によると、男は自分の会社が大手電話会社との間でマイラインの代理店契約を結んだという偽の話を基に、昨夏ごろから「ウチの下で代理店になって集めれば、契約数に応じて報奨金が入る」などと、同市内の金融業者らに持ちかけた。数十人から保証金名目で1口1000万円を集めた後、今年1月に行方不明になったという。 勧誘の場は数回設けられ、有力市議が同席したこともあったという。電話会社は、毎日新聞の取材に対し「男の会社とは代理店契約を結んでいない」としている。勧誘に関与したとされる社員は3月に退職したといい、「(元社員は)事件に関係しているが、内容については、警察が捜査中でありコメントできない」と話している。 ◆制度に関する知識不足に付け込む マイライン代理店契約をめぐる福井市の会社経営の30歳代の男による巨額詐欺事件は、知識不足に付け込み、マルチ商法の色合いもある全国でも例のないケースだ。だが、なぜ架空の契約話に数億円の金が動いたのか、など不明な点も多い。関係者の証言などを基に、男の人物像や事件の経過をたどった。 ■手口 会社関係者によると、男がもちかけた架空の契約はこうだ。男の会社がマイラインの総括代理店で、一口500万〜1000万円の保証金を支払えば、その下に中部・北陸代理店(1社)▽1次代理店(1社)▽2次代理店(数社)になる。加入者を獲得した際の報奨金や、割り引きになった電話使用料金の一部が代理店のランクに応じて支払われるという。しかし、こうした契約は全て作り話で、新商品であるマイラインの知名度の低さを悪用した、いわゆるマルチ商法と言える。 昨夏ごろから福井市の事務所やホテルなどで勧誘のための会合を10回程度設け、男は「絶対にもとがとれる」「保証金は返す」などと、簡単に高収入が得られるかのように言葉巧みに勧誘したらしい。再三、上京して電話会社との交渉していたことをにおわせたり、県選出国会議員の名を勝手に出し、電話会社の社員(当時)や有力市議が姿を見せたことや、関係者が電話会社の本社役員になりすましたこともあったという。 「説明会が終わった後、机に札束が山積みされていた」(会社関係者)ことも。毎日新聞が入手した会社の代理店リストでは契約者は三十数業者に及ぶ。 ■電話会社 通信各社で顧客を奪い合う登録商戦は過熱気味。こうした代理店契約に関しては、男が名前を出していた電話会社2社は「代理店は、法人登記したこれまでの関係を踏まえ、会社の業務内容を審査し厳選したうえで決めている。保証金をとることもない」としたうえで、男との関係や、男が契約者に語っていた高額の報奨金制度の存在を全面否定。うち1社は「代理店には1回線1000〜1500円の手数料を払う程度」と説明する。 ただ、勧誘の場に電話会社の社員がいたことについては、同社は「聞いている。社としては全く関与していないが、どの程度関与していたかについてはコメントできない」と釈明。社員が今年3月に退職したことを認めたが、「本人の申し出によるもの」と答えるにとどまり、明言を避けた。 ■男の実像 男は武生市出身。問題の会社は広告代理業や自販機リースなどさまざまな業種を展開し、昨夏に事務所を鯖江市から福井市に移転し、マイラインの勧誘を始めていたが、実態は関係者も分からないという。また、男は多額の借金を抱えているとみられ、今回の代理店契約でも債権者側が回収を図るため、出資したケースもあったという。 男は今年1月19日に行方不明になり、本人が書いたと思われる手紙が関係者の車から見つかった。「最初はマイラインが本当に出来ると思い、いっしょうけんめい代理(店)を作っていましたが、何かおかしいと思った時にはおそかった」「みんなには本当にめいわくをかけました」などと書かれていた。 ■有力市議 事件に関係したとされる有力市議は「自分の選挙を応援してくれたことがきっかけで知り合った」と、男と面識があること自体は認めた。そのうえで、「ボランティアで公園のペンキ塗りをするなど、福井駅前の活性化などまちづくりに熱心に取り組んでいたようだった」と、男の違った一面を紹介。 マイライン勧誘については「マイライン自体どんなものか知らなかった。説明会に出席したことなどは一切ない。名前を使われ迷惑しており、私も被害者」と無関係を強調した。一方で、男の事務所に行ったり、福井市内で開かれた会合には出席したことを認め、「マイライン関係ではない。支持者から『まちづくりについての会合だから顔を見せてくれ』と言われたので出ただけ」と釈明。「出席者がマイラインについて話していただろう」とも話すなど、歯切れが悪い。 (Mainichi Shimbun マイライン詐欺取材班) http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/200105/21-2.html |