「地下鉄サリンでは弟子たちにストップをかけた」——。初公判からちょうど1年ぶりに実現した罪状認否で、「教祖」は予想通り起訴事実を否認した。24日午前、東京地裁(阿部文洋裁判長)で開かれた麻原彰晃こと松本智津夫被告(42)の第34回公判。松本被告がまず強調したのは「弟子の責任」だった。さらに英語で認否し、それを自ら訳すという悪ふざけのような陳述を続ける。「無罪主張」の“独演会”に、検察官はぶ然とした表情を見せ、傍聴席からはため息がもれた。
松本被告は、紺のトレーナーに紺のズボン姿。被告席に座ると、認否の予行演習をするかのようにぶつぶつと独り言をつぶやき始めた。検察官が、17事件の起訴事実の要旨を朗読している間も独り言は続く。笑ったかと思うと左手を頭にあて、右手を回す奇妙なしぐさをして黙り込んだり、落ち着きがない。
午前10時15分。阿部裁判長が「それでは被告人に起訴された事件についての意見を聞きますが、述べますか」と促すと、被告は小声で「はい」と答え、ゆっくりと陳述台に立った。
「まず、地下鉄サリン事件についてですが……」。松本被告は聞き取りにくい声でしゃべり始め、「本質的には傷害であるのがポイントです。(事件2日前の3月)18日、村井(秀夫幹部)を呼んでストップを命令した。19日には井上(嘉浩被告)にストップを命じたが、結局彼らに負けた形になった」と“松本首謀”の構図を否定した。
落田耕太郎さんリンチ殺人の認否に移ると、松本被告は突然、あやふやな英語でぶつぶつと認否を始めた。「日本語で言いなさい」と注意する阿部裁判長を無視、「ソー・アワー・アクション……」などと続ける。次いで自ら日本語に訳し始め、「私は殺害の指示はしていませんが、弟子たちが直感的に殺した」と、「弟子の犯行」を強調。麻酔剤密造事件でも「厚生省の許可がなければ駄目だと止めたが、弟子が作ることにした」などと述べた。
坂本弁護士一家殺害事件についても、「ロウヤーサカモト……。何だっけ。アフターザット」と、意味不明のたどたどしい英語の陳述を続けた。日本語に戻ると冗舌になり、「実行犯は情状酌量で3年か4年しか求刑されない」「阿部裁判長も麻原彰晃はこの事件についてすべて無罪であると話をしている」などと、意味不明の陳述を続けた。
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